勤務先の健康保険に加入していた家族が亡くなったときは、会社が行う届出と、扶養だった家族の新しい保険への加入を分けて考えます。会社への連絡に加え、ご遺族にも手続きが必要です。
ただし、ご自分は別の保険に入り、子どもだけが故人の扶養だったなど、家族で対応が異なることもあります。誰に切り替えが必要かを確かめ、加入先や届出期限を整理することが大切です。
この記事では、会社への連絡・返却物と、扶養だった家族の加入先・期限・必要書類を説明します。切り替え中に受診する場合や書類が届かない場合の対応、埋葬料・埋葬費の確認事項も取り上げます。
まず故人の健康保険と家族の加入状況を整理する
最初に確認したいのは、次の3点です。手元の資料を見て、分からないことは故人の会社へ尋ねます。
- 故人が、亡くなった時点で加入していた健康保険
- 自分や子どもなど、故人の健康保険の扶養に入っていた家族
- 家族の近いうちの受診や、薬の処方予定
家族でも加入状況は異なるため、一人ずつ確認すると、誰に手続きが必要かを整理できます。
故人が入っていた健康保険を把握する
この記事では、故人が在職中に勤務先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に加入していた場合を中心に説明します。
「会社員だった」という情報だけで判断せず、資格情報のお知らせや資格確認書などに記載された保険者名(加入先の名称)を見ます。不明な場合は、会社の総務・人事担当者へ尋ねてください。
国民健康保険、後期高齢者医療に加入していた場合は、市区町村の担当窓口へ確認します。
家族の加入状況から切り替えが必要な人を確認する
故人が勤務先の健康保険に本人として加入し、自分や子どもがその扶養(被扶養者)だった場合は、故人の死亡日の翌日に、家族もその資格を失います。
扶養だった人には、新しい保険への加入手続きが必要です。家族の状況によって、対応は次のように分かれます。
| 家族の加入状況 | 必要な対応の目安 |
| 自分や子どもが故人の扶養だった | 扶養だった人それぞれの新しい加入先を確認する |
| 自分は勤務先の健康保険に加入し、子どもだけ故人の扶養だった | 子どもの新しい加入先を確認する。自分の勤務先の扶養にできるかも尋ねる |
| 家族がそれぞれ自分の勤務先の健康保険などに加入していた | 家族の死亡だけを理由に、全員が加入先を変える必要はない。それぞれの加入状況に応じて、必要な届出を確認する |
自分が国保に加入し、子どもだけが故人の扶養だった場合は、子どもも国保の加入対象になるかを市区町村へ尋ねます。国保には、勤務先の健康保険のような扶養制度はありません。
また、加入先が変わらなくても、国保では世帯主の変更などの届出が必要になる場合があります。国保に加入している家族がいる場合は、市区町村の担当窓口へ必要な対応を確認してください。
新しい加入先の選び方は、後の「扶養だった家族の次の加入先を整理する」で説明します。
故人の会社には何を確認する?
故人の会社へ死亡したことを伝え、必要な手続きと返却物を確認します。すでに連絡している場合は、未確認の事項や、家族の保険切り替えに必要な書類の受け取り方を尋ねてください。
会社への連絡と、会社が行う手続き
在職中に勤務先の健康保険へ加入していた人が亡くなった場合、資格喪失の届出は会社が行います。
日本年金機構が案内する提出時期は、事実発生から5日以内です。これは会社の届出期限であり、遺族が同じ届出を提出する期限ではありません。
遺族から会社へ連絡するときは、故人の氏名・死亡日、連絡する人の氏名・続柄を伝えます。そのうえで、会社が必要とする情報や書類、今後の担当者と連絡先を確認してください。
扶養だった家族がいる場合は、その人たちの保険切り替えも必要です。
会社の届出と並行して、家族の新しい加入先も確認します。健康保険組合に加入していた場合の届出先や返却経路は、会社・組合の案内に従います。
資格確認書などの返却物を確認する
返すものと返却方法は、故人の会社へ尋ねます。協会けんぽの場合、資格確認書などの扱いは次のとおりです。
| 手元にあるもの | 返却の扱い |
| 有効期限内の資格確認書 | 故人本人と、扶養だった家族に交付されている分を会社へ返す |
| 従来の健康保険証 | 返却不要 |
| 資格情報のお知らせ | 返却不要 |
| 有効期限切れの資格確認書 | 返却不要 |
高齢受給者証など、ほかの書類を持っている場合も、返却が必要かを会社に確認してください。資格確認書が見つからない場合は、そのことを伝えて手続きの案内を受けます。
返却不要の書類でも、資格を失った後の受診には使えません。また、資格情報のお知らせには加入先や記号・番号などが載っているため、給付の申請などに必要な確認が済むまでは、手元に残しておくと役立ちます。
この表は協会けんぽの案内に基づくものです。健康保険組合の場合は、会社・組合が案内する返却方法を確認します。
参考:協会けんぽ石川支部「健康保険証等の返却について(令和7年12月2日より)」
家族の資格喪失を確認できる書類を依頼する
国保などへの加入では、以前の健康保険の資格を失った日を確認する書類が必要になることがあります。会社には、資格喪失証明書などを誰に依頼し、いつ受け取れるかを尋ねます。
その際は、「故人の扶養だった私と子どもが、新しい健康保険に加入するために使います」と、書類を必要とする家族を具体的に伝えてください。
故人の情報だけでなく、加入する家族の氏名と、扶養から外れた日を確認できるかが重要です。受け取った書類も、対象となる家族の記載を確かめます。
発行元は会社や保険者などで、加入先が認める書類や代替資料も異なります。会社への依頼と併せて、新しい加入先へ必要な書類を確認してください。
書類が届かない場合の対応は、後の「切り替えに必要な書類がそろわない場合」で説明します。
扶養だった家族の次の加入先を整理する
次の加入先は、家族それぞれの働き方や、扶養に入るための条件などによって異なります。まず、次の表で確認先を整理します。
| 加入先の候補 | 最初の確認先と確認すること |
| 自分の勤務先の健康保険 | 自分の勤務先へ、現在の働き方で加入要件を満たすかを尋ねる |
| ほかの家族の勤務先の健康保険の扶養 | その家族の勤務先・保険者へ、扶養の条件、必要書類、認定日を確認する |
| 国民健康保険 | 住所地の市区町村へ、加入対象か、届出期限と必要書類を確認する |
後期高齢者医療など別の制度の対象となる場合もあるため、年齢や現在の加入状況も伝えてください。
勤務先の健康保険や、ほかの家族の扶養に入る場合
ご自身が働いている場合は、勤務先へ健康保険の加入対象かを尋ねます。勤務時間などの加入要件を満たす場合は、その勤務先で加入手続きを進めます。
ほかの家族の扶養に入る場合は、親族関係、収入、生計の状況などの条件を確認する必要があります。その家族を通して勤務先や保険者へ、故人の扶養だったことを伝え、必要書類と、いつから扶養として認定されるかを尋ねてください。
収入の確認では、給与だけでなく遺族年金なども対象となります。受給している、または受給予定の給付がある場合は、その内容も伝えると確認を進めやすくなります。
扶養に入れるかの回答を待っている場合は、結果が分かる時期と、認定される場合にいつから扶養になるかを確認してください。
扶養に入れない場合や、認定されるまでの期間にほかの健康保険の資格がない場合は、国保への加入が必要になることがあります。
回答待ちの間に国保の届出が遅れないよう、市区町村の国保窓口にも状況を伝え、加入手続きが必要かを相談します。
国民健康保険に加入する場合の窓口・期限・必要書類
勤務先の健康保険や、ほかの家族の扶養に入らず、国保の加入対象となる場合は、住所地の市区町村で手続きを行います。届出期限は、国保の資格が生じた日から14日以内です。
必要書類の目安は、以前の健康保険の資格を失った日が分かる書類や、本人確認書類などです。窓口には、故人の扶養だった家族のうち誰が加入するのかを伝え、必要な資料と申請方法を確認してください。
会社から証明書が届かない場合も、期限内に国保窓口へ状況を伝えます。書類がそろわない場合の詳しい対応は、後の「切り替えに必要な書類がそろわない場合」で説明します。
すでに14日を過ぎていても、届出自体は可能です。ただし、保険料等は本来の加入時期にさかのぼってかかり、やむを得ない理由なく届出が遅れた場合には、その間の医療費が給付されないことがあります。
期限を過ぎている場合は、遅れた事情と受診の有無を窓口へ伝え、手続きと医療費の扱いを確認してください。
健康保険の切り替え中に受診や書類で困ったとき
受診予定がある場合は、新しい加入先と医療機関へ、健康保険を切り替えている途中であることを伝えます。
書類や資格情報の反映を待っている場合も、受診日を伝えて対応方法を相談してください。
切り替え中に受診するときの確認事項
故人の扶養の資格を失った後は、以前の健康保険の資格では受診できません。まず、新しい加入先へ、いつから資格が始まるかと、手続きの進み具合を確認します。
新しい資格で受診する際は、マイナ保険証や資格確認書などを使います。「資格情報のお知らせ」は、単独では受診に使えないため注意が必要です。
加入資格があるのに、情報が反映されていないなどの理由でオンライン資格確認ができない場合は、医療機関の窓口へ事情を伝えてください。協会けんぽでは、状況に応じて次の対応を案内しています。
- マイナ保険証と、マイナポータルの資格情報画面を併せて提示する
- マイナ保険証と、資格情報のお知らせを併せて提示する
- 被保険者資格申立書を記入する方法について、窓口の案内を受ける
これらは、新しい保険の加入資格があることが前提です。資格が始まる日が分からない場合は、その点も加入先へ確認します。
医療費をいったん全額支払った場合
医療費を全額支払った場合は、領収書や明細書を保管し、受診日に加入していた保険の窓口へ、療養費の申請について尋ねます。
療養費は、やむを得ない事情で保険を使えずに受診した場合などに、申請によって給付を受けられる制度です。受診日の加入資格や支給条件を確認したうえで、支給の可否・金額が判断されます。
支給額は、保険診療の基準で計算した額などから本人負担分を除いた金額です。支払った全額が戻るわけではなく、保険診療の対象外となる費用も除かれます。
国保の場合は、住所地の市区町村へ申請方法を確認してください。必要な明細書は、受診時に受け取る書類だけでは足りない場合もあるため、領収書と併せて何を提出するかを尋ねます。
国保の届出が遅れている場合などは医療費の扱いが変わることもあるため、遅れた事情や受診日も伝えてください。
切り替えに必要な書類がそろわない場合
資格喪失を確認する書類が届かないときは、会社へ発行の進み具合と受け取りの見込みを尋ねます。同時に、新しい加入先へ、届いていない書類と手元の資料を伝え、代替資料や先にできる手続きがあるかを確認してください。
国保への加入では、書類がそろわない場合も、届出期限内に市区町村へ状況を伝えることが大切です。必要な資料や確認方法は自治体によって異なります。
会社から書類を受け取ることが難しく、故人が協会けんぽに加入していた場合は、年金事務所へ資格喪失等の確認請求について相談する方法もあります。
その際は、被保険者が亡くなったことと、扶養だった家族の手続きに使うことを伝えます。自分の分や子どもの分について、誰が請求できるか、どのような書類が必要かを確認してください。
健康保険組合に加入していた場合は、加入していた組合へ証明書の取得方法を尋ねます。
参考:日本年金機構「国民健康保険等に加入するため、健康保険の資格喪失証明等が必要になったとき」
埋葬料・埋葬費を申請できるか確認する
家族の保険切り替えとあわせて、故人の加入先に死亡時の給付も確認します。協会けんぽでは、被保険者本人が業務外の事由で亡くなった場合に、次の給付があります。
| 給付の種類 | 申請できる人 | 支給額 | 時効 |
| 埋葬料 | 故人に生計を維持されていた人 | 5万円 | 死亡日の翌日から2年 |
| 埋葬費 | 埋葬料を申請できる人がいない場合に、実際に埋葬を行った人 | 実際に埋葬に要した費用。上限5万円 | 埋葬日の翌日から2年 |
「生計を維持されていた人」は、生活費の一部でも故人に支えられていた人を含みます。健康保険の扶養に入っていなかった場合でも、埋葬料の対象となることがあります。
業務や通勤中の事故などが関係する場合は、給付の扱いを会社や加入先へ別途確認してください。健康保険組合に加入していた場合の給付や必要書類も、その組合の案内に従います。
申請する際は、誰が申請できるか、必要書類、提出先を故人の加入先へ尋ねます。国保・後期高齢者医療の「葬祭費」は、上の表をそのまま当てはめず、市区町村などの担当窓口で確認してください。
給付請求の時効と、扶養だった家族の保険加入の期限は別です。給付の確認・申請と並行して、家族の保険切り替えや受診への対応も進めます。
まとめ|会社への連絡と家族の保険切り替えを分けて進める
会社員だった家族が亡くなったときは、故人の会社が行う届出と、扶養だった家族の新しい保険への加入を分けて整理します。
まず、故人の加入先と、誰がその扶養に入っていたかを確認してください。会社には死亡したことを伝え、返却物と、家族の切り替えに使う書類の受け取り方を尋ねます。
扶養だった人は、それぞれの働き方や家族の状況に合う加入先を確認します。国保の対象となる場合は、資格が生じた日から14日以内の届出が必要です。書類が届かない場合も、加入先へ状況を伝え、先にできる対応を確認します。
受診予定があるときは、新しい保険の資格が始まる日と受診方法を、加入先・医療機関へ相談してください。埋葬料・埋葬費などの給付も、対象と期限を確認しながら進められます。
すべての手続きを一度に終える必要はありません。まずは家族ごとの加入状況と受診予定を整理し、必要な連絡先と期限を確かめるところから始めます。
健康保険以外に必要な手続きや、進める順番も確認したい方はこちらもご覧ください。

