お子さんがいらっしゃらない叔父さんが亡くなると、その相続人は、叔父さんの配偶者と、叔父さんのご兄弟姉妹や、おいめい、にあたる方々が相続人になります。
相続人の数が大勢になり、遺産相続が複雑になるケースもございます。
子どもがいない方が亡くなったときの法定相続人
その方に配偶者がいらっしゃるときは、配偶者と誰か、という組み合わせで法定相続人になります。
両親もしくは父母いずれかがご健在であれば、配偶者と父母が相続人になりますが、
叔父さんが高齢で亡くなられたときは、ご両親もご他界されているケースが多いので、
その場合は、亡くなられた叔父さんの兄弟姉妹が相続人になります。
おいめいが法定相続人になるとき
亡くなられた叔父さんのご兄弟姉妹のうち、先に他界されている方がいらっしゃるときは、その方の子(叔父さんからみた、おいめい)が法定相続人になります。
先に他界した兄弟姉妹に子がいないときは、その方の相続権は、ほかの相続人に分配されます。
たとえば父親を含め、父親のご兄弟姉妹全員が他界しており、たった一人ご健在であった叔父さんが亡くなられたときなどは、各ご兄弟姉妹のお子さんたちが法定相続人になりますため、
いとこ同士で叔父さんの遺産相続手続きを進めていくことになります。
叔父さんの遺産相続中に、配偶者が亡くなられたとき
いとこ同士で叔父さんの遺産相続手続きを進めている最中に、その配偶者までもが亡くなられるケースもございます。
その場合は、新たに叔父さんの配偶者さまの遺産相続が発生し、新たに別の法定相続人が登場することになります。
本来、配偶者さまが得るはずであった叔父さんの資産は、新たに登場された、配偶者さまの法定相続人が、代わって相続することになるのです。
こうなりますと、法定相続人の人数が、10人を超えることも珍しくなく、またお互いに面識もなく、存在も知らない方が相続人になっていることも珍しくありません。
それでも全員と連絡を取り、協力をしていただけなければ、遺産相続手続きは遅々として進まないことになりますため、大変な苦労となります。
子どものいない叔父と、その配偶者が相次いで亡くなったときの遺産相続の進め方
- 戸籍謄本を収集し、家系図を作成、法定相続人を確定させます
- 配偶者が相次いで亡くなったときは、配偶者についても、戸籍謄本を収集し、家系図を作成、法定相続人を確定させます
- 戸籍謄本と一緒に、戸籍の附票を収集します
- 戸籍の附票には住民票の住所が記載されていますので、その住所を訪ねたり、お手紙を送付するなどして、遺産相続の連絡をおこないます
- 大勢の法定相続人がいるときや、面識のない方がいるときは、遺産分割協議が難しくなりますので、法定相続分通りに遺産分割を実行されると無難です
戸籍謄本の収集
亡くなられた方を中心に、
- 出生までの戸籍を取得
- その後、亡くなられた方のご両親の出生から死亡までの戸籍謄本を取得
- 次に、ご兄弟姉妹が健在であれば、その方の現在戸籍謄本を取得
- ご兄弟姉妹に先に他界されている方がいるときは、その方の出生から死亡までの戸籍謄本を取得
- その方に子がいるときは、子の現在戸籍謄本を取得、亡くなった子がいるときは、死亡の戸籍を取得
そうやって収集した戸籍謄本から家系図を作成し、法務局に法定相続情報を申請します。
各相続人へ連絡
法定相続人が確定したら、順番に、全員に連絡を取っていきます。
電話番号などの連絡先が分かる方へは直接連絡し、今回の経緯と今後の遺産相続について相談します。
連絡先が分からない方や、面識のない方がいらっしゃるときは、戸籍謄本といっしょに戸籍の附票を取得します。
戸籍の附票には、その方の住民票の住所地が記載されていますので、その住所を訪ねる、お手紙を作成するなどして連絡を取ります。
ご親族の中に、その方と連絡が取れる方がいらっしゃるのであれば、連絡を取ってもらうようお願いします。
一人でも欠けると遺産相続は進みません。
協力を拒否されたときも、遺産相続が停滞しますので注意が必要です。
財産目録の作成
故人のプラスの資産とマイナスの資産を一覧にして、財産目録を作成します。
財産目録は、なるべく全員にわかりやすく、故人の資産を整理してまとめていきます。
こちらに不正がないことも一目瞭然にさせるために、細かな金額であっても、漏らさず記載されるのが良いです。
プラスの総合計額から、お葬式代や手続きにかかった費用、未払いになっていた各種支払い費用などをマイナスし、残った資産を相続人の皆さんで分割します。
財産目録は全員の協力がなくても、相続人であれば一人でも作成できます。
参照:財産目録について
相続を放棄される方がいるときは
家庭裁判所に申請する相続放棄は、各相続人がひとりずつおこなう必要があります。
連絡が取れて、自分は相続を辞退すると言われたときは、相続放棄の手続を取りましょう。
- 家庭裁判所に申請する正式な相続放棄
- 相続人の中の特定の誰かに自分の相続分を譲渡する相続放棄
1.の家庭裁判所に申請する正式な相続放棄は、負債があるときなどに利用します。故人の債権者に対し自分は相続を放棄したと主張するためです。
もしくは、相続人が多く、手続きがたくさんある中で、数名のみ放棄するときは、各手続き先に裁判所の証明書を提出することができますので、今後の手続きを簡便にするためにも利用できます。
ただし、1.の放棄をすると、その方の相続権が、次の順位の相続人に移ったり、他の相続人全員に均等に振り分けられてしまうことになります。
それを避け、他の特定の誰かに譲渡するときは、遺産分割協議による相続放棄をおこないます。
相続分譲渡証明書を作成したり、他の特定の誰かが相続するという遺産分割協議書に署名することで、ご自身の相続権を譲渡することができます。
参照:相続の放棄の申述
遺産分割の実行
そうやって、故人の分けるべき資産が確定し、誰がどのように相続するかの配分や方法が決まったら、具体的に遺産分割がなされるよう、実行していきます。
預貯金・・・解約し分割します
証 券・・・名義変更もしくは売却換金し分割します
不動産・・・名義変更もしくは売却換金し分割します
※証券や不動産を特定の方が取得したときは、それぞれを金銭換算し、他の相続人へは現金を交付し分割します(代償分割)
貴金属・・・評価がつけば評価額で分割しますが、お形見として皆さんで分けられても良いです
お子さんがいない方は、ぜひ遺言書のご準備を
こういった複雑な事態を回避するためには、ご生前のお元気なうちに、遺言書を作成しておくことをオススメします。
ご親族の中で親しいご関係の方や、お世話になった友人、知人の方でも構いません。
ご自身が一生をかけて築かれたご資産を、ご自身の身に万が一のことがあったときに、引き継いでもらい、もしくはきちんとご処分をしていただけるように、遺言書を作成してください。
遺言書は何度でも書き換えができます
そうはいっても誰に託してよいかわからない、まだ先のことだからと、準備をされない方が非常に多いです。
それでも、まずは初めての遺言書を作成してみてください。
月日が経ってお考えが変わったときは、何度でも書き換えることができます。
また、そんなに残る資産はないからと、準備をされない方もいらっしゃいますが、資産の多寡は気にされないでください。
生きているうちに使い切り、残らなくても大丈夫です。
必ず残された方の助けになりますので、遺言書の作成をお願いします。
夫婦でお互いに相続させるとする遺言書の注意点
ご夫婦がそれぞれに、夫が先に亡くなったときはすべて妻へ相続させる、
妻が先に亡くなったときはすべて夫へ相続させる、という遺言書を残される方も多数いらっしゃいます。
これはすばらしいことですが、注意点がございます。
ご夫婦の一方が先に他界されたときは、遺言書を使って、残された一方が遺産相続を進めることができますが、
問題は、その後、残された一方も亡くなられたときです。
たとえば夫が先に他界し妻が相続したあと、妻も亡くなったときは、妻の遺言書にはすべて夫へと記載されていますが、その夫はすでに他界しています。
この場合は、せっかくの遺言書が無効になってしまうので注意が必要です。
再度、遺言書を作成するのがもっとも良いですが、できましたら、ご夫婦で遺言書を作成されるときに、
夫は妻へ、妻は夫へ相続させる、
ただし、相手が先に他界しているときは~、として、先を見据えた遺言書を作成していただくことがオススメです。予備的遺言といいます。
参照:予備的な遺言について
ぜひ一度、あなたに将来万が一のことがあったときに、ご資産をどうするのが良いか、考えてみてください。
もしくはご親族にそのような方がいらっしゃり、ご自身が法定相続人になるかも知れないという方は、非常に言いづらいこととはおもいますが、そのご親族に、遺言書の作成を勧められると良いかと思います。