◆疎遠で、連絡先が分からないご親族が、共同のご相続人となるケースがございます。
この場合はどうすればよいのでしょうか。
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何とか連絡を取るしかありません
連絡が取れないからという理由で、その方を除外して遺産相続手続きを進めることは、絶対にできません。
たとえ遠方であっても、住所がわかるのであれば訪問する、連絡先を知っていそうな方に尋ねてみる、など、可能な限りの対応が必要です。
また、感情的に連絡を取りたくないという場合もございますが、これは、感情を抑えて連絡を取るか、そもそも遺産相続手続きを進めることをあきらめるか、という判断にまでなってきます。
戸籍の附票で、住所が確認できます
住所がわからない場合は、戸籍の附票を確認するという方法がございます。
本来、戸籍謄本には、本籍地の記載はありますが、住所の記載はありません。
住所は住民票で管理されているためです。
ただし、住民票記載のデータは、本籍地にある戸籍謄本とリンクしていますので、戸籍の附票と呼ばれる書類を取り寄せることで、その方の住民票記載のデータを確認することができます。
ご自身や亡くなられた方から戸籍をたどり、相続人を確定していくのですが、その時に、戸籍と一緒に附票を請求すれば、その方の住民票記載の住所情報を得ることができます。
住所が確認出来たら、訪問してみるか、まずはお手紙を出してみるなどをして、コンタクトをとります。
住民票記載の住所に不在のときは、法律上の行方不明者となります
まれに、住民票記載の住所に、お住まいをされていないケースがございます。
引っ越しをして住民票を移していない、本当の行方不明者になられている、などが考えられます。
遺産相続手続きにおきましては、住民票記載地にいらっしゃらないときは、理由を問わず、法律上の行方不明者として取り扱われますので、不在者財産管理人のお手配をする、もしくは亡くなられている可能性が高いのであれば、失踪宣告を進めるなど、家庭裁判所を通して、正式なお手配を進める必要がございます。
不在者財産管理人
相続人の中に行方不明者がいるときに、遺産分割を進める場合は、その方の財産を保全するために、不在者財産管理人の選任を、不在者となる方の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所 に、申し立てをおこなわなければなりません。
他の共同相続人は、裁判所が選任した不在者財産管理人(主にその地域の弁護士さんが就任します)と、遺産分割協議をおこない、各種手続きの進行、遺産分割を実行していくことになります。
不在者財産管理人が選任された遺産分割は、裁判所の監督下に置かれることになりますため、不在者の方の法定相続分を遵守しなければならず、たとえば自宅の名義を譲ってもらうときは、無償ではなく、相応の代償金を支払うことになります。
また、選任までには結構な時間と費用がかかります。
そこまでして、(相当な費用と時間をかけてまで)、相続手続きを進めるのかどうかを、ご相続人の皆様で話あっていただくことが重要になるかとおもいます。
失踪宣告
行方不明者の方が、7年以上連絡不明であり、すでに亡くなられている可能性が高いと思われるときは、不在者となる方の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所 に、失踪宣告の申立をおこなうことができます。
(参考)裁判所ホームページ | 失踪宣告
上述の不在者財産管理人の選任は、行方不明の方が、どこかで生きていらっしゃるということが前提になりますが、失踪宣告では、行方不明の方がすでに亡くなっているとみなすことになります。
裁判所の決定があると、法律上死亡したものと擬制されますため、相当な時間と費用がかかることはもちろん、相当に重い決定であることをご認識いただいた上で、申立をおこなうのかどうかを、ご相続人の皆様で話あっていただくことが重要になるかとおもいます。
遺産相続をしないとどうなるか
行方不明者がいる場合に、裁判所を通してまで、時間と費用をかけてまで、進めるほどではないとお考えになる方も、非常に多くいらっしゃいます。
その場合は、手続きがストップして、そのまま放置されることとなります。
預貯金等の金融資産は凍結されたまま、金融機関の口座に保管されることになります。
不動産も故人名義のままとなりますが、実務上は、固定資産税の支払いさえ、誰かが継続すれば、不動産をそのまま利用できるケースが多いです。
現在、日本中には、こうして手続きができないまま、放置されてしまっている預貯金や不動産が多数あるとされており、少しずつ社会問題化してきています。
相続せず放置された預貯金はどうなるか
預貯金については、2019年より休眠預金等活用法が開始され、10年間利用がない口座は休眠預金とし、預金保険機構へ移管され、民間公益活動に活用されることとなりました。
(参考)金融庁ホームページ https://www.fsa.go.jp/policy/kyuminyokin/kyuminyokin.html
相続せず放置された不動産はどうなるか
令和6年(2024年)4月1日より、相続登記が義務化され、期限が設けられました。
詳しくはこちらをご参照ください。
不動産については、そのまま継続して利用できるケースは多いですが、第三者へ売却したり、貸したりしようとするときには、きちんと正式に相続登記をおこなわなければなりません。
もしくは、地方の山林や田畑、人口が少なく売買需要の低いエリアの宅地など、売りたくても売れない不動産がある、固定資産税や維持費だけがかかる、など、もう自分は利用しないので所有権を放棄したいという要望も高まっています。
所有権の放棄については、国でも審議がおこなわれており、不動産相続登記の義務化とともに、希望しない場合は放棄もできるように、改正の準備が進められています。