あらゆる遺産相続の手続きには、各ご相続人の印鑑証明書が、必須になります。
なぜ、実印を押印し、印鑑証明書は何に使われるのでしょうか。
印鑑証明書とは
印鑑証明書とは、実印が実印の所有者として登録されている個人または法人のものであることを公的に証明する書類です。日本では市区町村役場が発行する重要な公的書類の一つで、契約や重要な手続きで使用されます。
日本はハンコ文化ともいいますが、その最たるものが、実印と印鑑証明書です。
今や100円ショップでも簡単に印鑑が手に入りますので、ある書類に署名と押印がなされていても、本当にその印鑑が、押印した本人のものであるかどうか、確かめようがありません。
そこで、この印影は間違いなく本人のものであると、公的機関に証明してもらう手段として、印鑑登録の制度がございます。
まず、実印をお持ちでない方は作成しておきましょう。
ネットで簡単に注文することも可能です。
また、女性の場合は苗字が変わることがあるため、下の名前でつくられる方も多いです。
印鑑証明書の取得手続き
1.印鑑登録
印鑑証明書を取得するには、まず役場で実印の登録を行う必要があります。
2.印鑑証明書の申請
登録された実印の印鑑証明書を申請し、発行してもらいます。
申請時に必要なもの
- 印鑑登録証(印鑑登録カード)
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
誰でも印鑑証明書が取得できる
印鑑カードがあれば、本人以外でも印鑑証明書を取得することが出来ます。
印鑑証明書は、市区役所の窓口で発行されるのが基本です。今は、マイナンバーカードがあればコンビニで発行できる自治体も増えてきましたね。
ご本人が体調が良くないなどの理由で、窓口へ行けないといった場合もございますが、このときは、代わりに窓口へ行くことができるご親族の方などに、ご本人の印鑑登録カードを預けることで、代わりに印鑑証明書を取得してもらうことができます。
自治体にもよりますが、委任状不要のケースもあります。
事前に自治体に確認をし、誰かに取得をお願いするときは、きちんと信頼ができる方にご依頼されるよう、ご留意いただけたらと思います。
実印が不要になったとき
本人が死亡した場合など、実印が必要ではなくなったとき、どのように対処すればいいでしょうか。後々トラブルにならないよう適切に対処しましょう。
印鑑登録の抹消
実印が不要になった場合、印鑑登録を抹消します。これにより、第三者による悪用を防ぐことができます。
抹消手続きの方法
印鑑登録証(印鑑登録カード)を持参し、登録地の市区町村役場で抹消手続きを行います。
死亡した場合:死亡届が出されると、印鑑登録は消失しますので、特にお手続きは不要です。
住所変更をする場合:住所変更時も転出届を出すと同時に印鑑登録は抹消されるため、特別な手続きは不要です。
実印そのものの保管または処分
保管しておきたい場合は保管しておいても大丈夫ですが、処分する場合は念のため、物理的に破壊するか、印影が判別できないよう、削るなどをして完全に使えなくすると安心です。
また、印鑑登録証(印鑑登録カード)は、印鑑登録の抹消時に役場へ返却するのが一般的ですが、返却しなくてもよいとしている自治体もありますので確認を取るとよいでしょう。
印鑑証明書の活用例
印鑑証明書は、重要な契約や法的手続きで本人確認や実印の正当性を証明するために使用されます。
主な活用例
不動産の売買・賃貸契約 | 不動産の名義変更や契約書の締結時に使用 |
---|---|
自動車の登録・売買 | 車の所有権移転時に必要 |
ローンや借入契約 | 金融機関との借入契約での本人確認 |
保険金の受取 | 契約者の身元や権利を確認する |
相続手続き | 遺産分割協議書などの書類に添付 |
法人設立 | 法人設立時の登記申請時、代表者のものが必要 |
その他の契約 | 高額な取引や法的拘束力の強い契約 |
葬儀後にしないといけないこともたくさんあり、その中で取得しないといけない証明書もたくさんあります。相続手続きにおいても印鑑証明書は重要なものになります。
葬儀後の手続きも踏まえて今一度確認してみましょう。
印鑑証明書の有効期限
法的な有効期限はないですが、提出先によっては3か月以内の発行が求められる場合が多いです。
期限を過ぎたものは使用できないこともあるので各提出先に確認を取っておくことをおすすめします。
注意点
- 一人につき登録できる実印は1つだけになります。
- 印鑑証明書を発行する際、必ず印鑑登録証が必要となります。紛失した場合は、再発行手続きが必要になってきます。
- 印鑑証明書は法律的効力のある契約に使用されるため、不正使用されると重大な問題に発展する可能性があります。
保管場所には十分注意し、他人に渡さないようにしましょう。
遺産相続とは、書類で事実関係を証明していく作業
遺産分割協議書を作成する場合や金融機関で相続手続きを行う場合に印鑑証明書の添付が必要になってきます。
また、相続税を申告する場合にも必要になることがあります。申告書類に捺印するのは、実印でなくてもよいとされていますが、遺産分割協議書に捺印された印鑑が実印であるかどうかを確認するなど、印鑑証明書を添付することで、本人の印鑑に間違いないことを証明するために必要になってきます。
印鑑登録証明書が必要なケース
印鑑登録証明書が必要なケースは主に以下になります。
遺産分割協議書 | 相続人全員が遺産分割の内容に合意したことを証明する書類です。各相続人が署名・押印した実印の正当性を確認するために、印鑑登録証明書が求められます。協議書に実印を押した全ての相続人分が必要です。 |
---|---|
相続財産の名義変更 | 遺産分割協議書をもとに不動産の名義を相続人に変更する際、法務局に印鑑登録証明書を提出します。登記申請書の添付書類として遺産分割協議書を提出する場合、実印と印鑑登録証明書が必要になります。 |
金融機関の口座名義変更・解約 | 銀行や証券会社で相続手続きにおいて、実印の押印が必要な場合に印鑑登録証明書を求められることがあります。 |
必要な印鑑登録証明書の数
・遺産分割協議書
遺産分割協議書に署名・押印する相続人全員分1部ずつの印鑑登録証明書が必要となります。
・不動産登記
法務局へ1部提出が必要です。
・銀行手続き
金融機関ごとに1部必要です。(手続き件数による)
印鑑登録証明書が不要なケース
遺言書がある場合
遺言書がある場合は、遺言書に従いますので、法定相続人が不動産を相続する場合、印鑑証明書は不要になります。
印鑑登録証明書ではなく、法務局に遺言書を提出します。
下記のものであれば公的な効力がありますので手続きが可能になります。
- 公証役場で作成した遺言書
- 自筆の遺言書で、法務局で保管されていたもの
- 自筆証書遺言で、家庭裁判所で「検認」の手続きを済ませたもの
相続人が一人しかいない場合
相続人が一人しかいない場合、遺産分割協議書を作成する必要がなく、印鑑証明書も不要です。
印鑑登録証明書が不要なケースもございますが、銀行手続きなどで必要なこともありますので必要な書類は確認を取りましょう。遺産相続には時間を要しますので、不備がないように準備しましょう。
本人の意思であることを証明する
遺産相続の各手続き機関では、本人しか所持していないはずの実印を押印し、印鑑証明書を添付することで、提出された書類が本当に本人の意思に沿っているかどうかを確認する必要があります。
ところが、その全員と面談をするわけにもいかないですし、電話での確認にも限界があります。
そこで、本人の意思である証明として、実印の押印と、印鑑証明書の添付を求めることになります。
遺産相続手続きに印鑑証明書が必要だと言われても、印鑑証明書は大事なものだから簡単には渡せない、というご意見もございますが、上述のとおり、書類でご本人の意思証明をしていただかなくてはなりません。
逆に言えば、本人しか所持していないはずの実印が押印され、印鑑証明書まで添付されていれば、それが実は本人の意思ではなかったとしても、不備のない書類として、取り扱われることになります。
実印と印鑑証明書の意義をご理解いただき、何に気を付けなければいけないのかを、各人がご留意いただくことが、大切かと思います。
まとめ
印鑑証明書は、遺産相続手続きで本人の意思を公的に証明するためや、遺産相続手続きにおいて欠かせない必須の書類です。
この証明書は、市区町村役場が発行し、契約や重要な手続きにおいて本人確認や意思確認のために使用されます。
特に、不動産登記や金融機関での手続きに必要で、提出先に応じて正確に準備することが大切です。
印鑑証明書幅広く使用され、正確で信頼性の高い証明手段として機能します。一方で、その効力ゆえに不正使用のリスクも高く、取得・管理には細心の注意が必要です。印鑑証明書の重要性を理解し、手続きに適切に活用することが大切です。