親族が亡くなり、軽自動車を引き継ぐことになった場合は、まず車検証上の「所有者」を確認します。
故人が所有者で、相続人の1人が引き継ぐ場合は、軽自動車検査協会で相続による名義変更を行います。
ただし、普通車とは必要書類の扱いが異なり、所有者が販売店やローン会社の場合、売却・廃車を予定している場合などは進め方も変わります。
この記事では、相続した軽自動車の名義変更に必要な書類、普通車との違い、申請先や期限・費用、売却・廃車する場合の手続きを順に解説します。
※本記事では、自動車検査証の記録事項を変更する手続きを、分かりやすく「名義変更」と表記します。
故人が所有者の場合|軽自動車の名義変更に必要な書類
故人が車検証上の所有者で、相続人の1人が新しい所有者・使用者になる場合は、次の4種類を中心にそろえます。
- 自動車検査証(車検証)の原本
- 新しい使用者の住所を証する書面
- 故人の死亡と、新しい所有者が相続人であることを確認できる書面
- 自動車検査証変更記録申請書

これに、本人以外が手続きする場合や、使用の本拠の管轄が変わる場合など、条件に応じた書類を追加します。
必要書類や最新の申請書様式は、軽自動車検査協会の「名義変更」で確認できます。
まずそろえる基本書類
標準ケースで先にそろえる書類は、次のとおりです。
| 書類 | 用意するもの | 原本・コピー | 主な注意点 |
| 自動車検査証 | 現在の車検証 | 原本 | コピーは使用不可 |
| 新しい使用者の住所を証する書面 | 住民票の写し(マイナンバーの記載がないもの)または印鑑登録証明書のいずれか1点 | 条件を満たすコピーも使用可 | 発行から3か月以内。複数ページの場合は全ページを用意します |
| 死亡・相続関係を確認する書面 | 故人の死亡と、新しい所有者が相続人であることを確認できる戸籍謄本等、または法務局が交付する法定相続情報一覧図 | コピーも使用可 | 戸籍謄本等に有効期限はありません。複数ページの場合は全ページが必要です |
| 申請書 | 自動車検査証変更記録申請書(軽第1号様式または軽専用第1号様式) | 所定様式 | 公式サイトから入手するか、窓口で受け取れます |
死亡診断書は、死亡・相続関係を確認する書面として原則使用できません。
手元にある戸籍で、故人が亡くなったことと、新しい所有者がその相続人であることを確認できるか分からない場合は、申請先の軽自動車検査協会へ書類の内容を伝えて確認します。
条件によって追加になる書類
基本書類のほかに、誰が申請するか、使用の本拠の管轄が変わるかなどによって必要なものが追加されます。
| 条件 | 追加で必要になるもの | 注意点 |
| 新しい使用者本人以外が申請する | 申請依頼書(様式5) | 普通車の「委任状」と同じ書類ではありません |
| 使用の本拠の管轄が変わる | ナンバープレート | 新しいナンバープレート代が別途かかります |

管轄が変わらなければ、名義変更のためにナンバープレートを返納する必要はありません。
このほか、希望ナンバーや事業用自動車など、条件によって追加の書類が必要になる場合があります。
普通車と軽自動車では相続の必要書類が異なる
軽自動車と普通車では、どちらも車検証や死亡・相続関係を確認する書面を用意します。ただし、相続による名義変更で必要となる書類や申請先は同じではありません。
特に、普通車の相続手続きで使われる遺産分割協議書や実印、印鑑証明書などを、そのまま軽自動車でも必要だと考えないことがポイントです。
軽自動車では必要書類の扱いが異なる
普通車の代表的な単独相続では、相続人が複数いる場合の遺産分割協議書等、相続する人の印鑑証明書、実印または委任状などが案内されています。
一方、軽自動車検査協会が案内する相続による名義変更では、故人の死亡と新しい所有者が相続人であることを確認できる戸籍謄本等または法定相続情報一覧図を中心に手続きを進めます。
| 論点 | 軽自動車 | 普通車の代表的な単独相続例 |
| 申請先 | 軽自動車検査協会 | 運輸支局・自動車検査登録事務所 |
| 相続関係の確認 | 故人の死亡と、新所有者が相続人であることを確認できる書面 | 死亡・相続人全員を確認する戸籍等に加え、取得方法に応じた書類 |
| 遺産分割協議書 | 標準的な相続名義変更の必要書類としては案内されていない | 相続人が複数いる単独相続では原則として必要となる書類の一つ |
| 印鑑証明書 | 新しい使用者の住所証明として選べる書面の一つ | 単独相続人の印鑑証明書が必要 |
| 車庫関係 | 軽自動車検査協会への名義変更では車庫証明書を提出しない | 条件に応じて車庫証明書が必要 |
なお、軽自動車でも、使用する地域や保管場所の変更状況によっては、名義変更とは別に警察署への保管場所届出が必要になる場合があります。
普通車の相続手続きについては、関東運輸局「単独相続(相続人のうち一人が相続する場合)」で確認できます。
参考:関東運輸局「単独相続(相続人のうち一人が相続する場合)」
車検証の所有者が故人でない場合は、先に所有者へ確認する
相続による名義変更の書類を集める前に、まず車検証に記録されている「所有者」と「使用者」を確認します。
故人が車を使っていたとしても、車検証上の所有者が故人とは限りません。
所有者が販売店やローン会社などになっている場合は、これまで説明した「故人が所有者」の相続名義変更とは手続きが異なります。
なお、電子車検証では、所有者の氏名・住所や使用者の住所などは券面に表示されません。車検証情報閲覧アプリや「自動車検査証記録事項」で、記録されている所有者・使用者を確認します。

所有者が販売店やローン会社などの場合
車検証に記録された使用者と所有者が異なる場合は、名義変更を進める前に、現在の所有者の同意が必要です。
たとえば、故人が使用者であっても、所有者がディーラー、ローン会社、信販会社などの場合は、その所有者へ先に連絡します。
車検証の情報を確認したうえで、所有者名や車両情報を伝え、必要な手続きや書類の案内を受けます。
所有者の同意を得ずに、「故人が所有者」の場合と同じ相続名義変更として進めることはできません。
そのため、「故人が使っていた車だから、故人名義だろう」と考えて相続用の戸籍などを集め始めるのではなく、最初に車検証上の所有者を確認することがポイントです。
軽自動車の名義変更はどこでする?申請先と手続きの流れ
相続した軽自動車の名義変更は、新しい使用者の「使用の本拠の位置」を管轄する軽自動車検査協会で行います。
必要書類を確認した後は、大きく次の流れで進めます。
- 申請先となる軽自動車検査協会を確認する
- 必要書類を提出して名義変更を申請する
- 新しい車検証を受け取り、関連する手続きを確認する
新しい使用者の使用の本拠を管轄する軽自動車検査協会を確認する
申請先は、新しい使用者の「使用の本拠の位置」を管轄する軽自動車検査協会の事務所・支所・分室です。
そのため、自宅から最も近い軽自動車検査協会で自由に手続きできるわけではありません。名義変更後にその軽自動車を使用する本拠の位置を基準に、申請先を確認します。
また、現在の使用の本拠と新しい使用の本拠でナンバープレートの管轄が変わる場合は、ナンバープレートも変更します
必要書類を提出して名義変更を申請する
申請先が分かったら、前半で確認した基本書類と、自分の条件に応じて必要となる追加書類をそろえて窓口で申請します。

必要書類は「名義変更(売買・譲渡・その他)」で確認できます。申請時は、自動車検査証変更記録申請書と必要書類を提出し、手続きを進めます。
新しい車検証を受け取り、関連する手続きを確認する
名義変更が終わったら、新しい車検証を受け取り、氏名・住所・車両番号など、申請した内容が正しく反映されているか確認します。
その後、必要に応じて軽自動車税の申告や、警察署への保管場所届出など、名義変更に関連する手続きを確認します。
軽自動車検査協会への名義変更では車庫証明書を提出しませんが、使用する地域や保管場所の変更状況によっては、別途、警察署への保管場所届出が必要になる場合があります。
軽自動車の名義変更の期限と費用
必要書類を確認したら、申請の期限と費用も確認しておきます。
手続きの期限
自動車検査証の記録事項に変更があった場合は、軽自動車検査協会は「その事由があった日から15日以内」と案内しています。
戸籍などの準備に時間がかかることもあるため、車を引き継ぐ人や車検証上の所有者を早めに確認しておくと、その後の手続きを進めやすくなります。
参考:軽自動車検査協会「名義変更、住所変更の手続きに期限はありますか」
名義変更にかかる費用
自動車検査証の記録事項を変更する申請手数料は無料です。
ただし、名義変更に伴って発生する費用がすべてゼロになるわけではありません。使用の本拠が変わり、ナンバープレートの管轄も変わる場合は、新しいナンバープレートの交付費用が別途かかります。
希望ナンバーなどを利用する場合も別途費用がかかるため、必要に応じて申請先の案内を確認します。
乗り続ける・売却・廃車で手続きの進め方が変わる
相続した軽自動車を今後どうするかによって、手続きの進め方が変わります。
故人が所有者で、相続人の1人が引き継いで乗り続ける場合は、これまで説明した相続による名義変更を進めます。
一方、故人名義のまま第三者へ売却する場合や、今後使用せず廃車にする場合は、同じ順番で進めるとは限りません。
また、誰が車を取得するかまだ決まっていない場合は、新しい所有者を決めた前提で書類を作る前に、相続人の間で誰が取得するかを整理します。
売却・廃車を予定している場合
故人名義の軽自動車を売却・譲渡する場合は、相続人が乗り続ける場合と同じ順番で手続きを進めるとは限りません。
軽自動車検査協会では、車検証上の所有者である故人から第三者へ直接譲渡したい場合、新しい使用者の使用の本拠を管轄する事務所のコールセンターへ問い合わせるよう案内しています。
そのため、売却先が決まっている場合は、相続人への名義変更を先に行うと決めず、売却方法に応じた手続きと必要書類を確認します。
一方、今後使用せず廃車にする場合は、所有者死亡による名義・住所変更と、一時使用中止または解体返納の手続きを同日に行うことができます。

この場合は、廃車に必要な書類に加えて、所有者死亡による名義変更の書類も必要です。
売却・廃車それぞれの具体的な必要書類は、軽自動車検査協会の案内や管轄事務所で確認できます。
誰が車を取得するか決まっていない場合
誰が軽自動車を取得するかまだ決まっていない場合は、新しい所有者を決めた前提で名義変更の書類を作る前に、相続人の間で車を誰が取得するか整理します。
軽自動車検査協会で行うのは、決まった内容を車検証へ反映するための手続きです。相続人のうち誰が車を取得するかを、軽自動車検査協会の名義変更手続きで決めるものではありません。
取得する人が決まった後、その人を新しい所有者として必要書類をそろえます。
相続財産を誰が取得するか決める方法については、こちらで詳しく説明しています。
まとめ|相続した軽自動車は、所有者と今後の扱いを確認して手続きを進める
相続した軽自動車の手続きを始めるときは、まず車検証上の所有者を確認します。
故人が所有者で、相続人の1人が引き継いで乗り続ける場合は、車検証、住所を証する書面、故人の死亡と相続関係を確認できる書面、申請書を中心に準備します。
本人以外が申請する場合や、ナンバープレートの管轄が変わる場合は、条件に応じた書類を追加します。
一方、所有者が販売店やローン会社になっている場合は、先に現在の所有者へ確認が必要です。
売却・廃車を予定している場合や、誰が車を取得するかまだ決まっていない場合も、相続人が乗り続ける場合と同じ順番で進めるとは限りません。
ご自身のケースが決まったら、新しい使用者の「使用の本拠の位置」を管轄する軽自動車検査協会を確認し、必要書類をそろえて申請へ進みます。

