不動産、銀行、有価証券などの遺産相続手続きをおこなうためには、さまざまな必要書類を準備しなくてはなりません。
通常は、はじめて遺産相続をご経験されるケースがほとんどですから、役所や法務局、銀行などで必要書類の用意をもとめられても、まず言葉の意味を理解することから困惑することになってしまいます。
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代表的な遺産相続手続きの必要書類
- 代表的な遺産相続手続きの必要書類
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- 戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本、住民票、戸籍の附票
- 印鑑証明書
- 不動産登記簿謄本
- 固定資産評価証明書
- 金融資産の残高証明書
- 遺産分割協議書
- 遺言書の検認済み証明書、家庭裁判所の審判書 など
たとえ家族であっても、本人以外のものが必要書類を取り寄せようとすると、本人からの委任状が必要になります。
数ある必要書類の準備の中で、当センターが業務を受任したときに、まずおこなうのが戸籍謄本の収集です。
出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本とは
銀行などの相続手続きで、必要書類の説明を受けるときに必ず求められるものが、亡なられた方の出生から死亡までの戸籍謄本です。
最後の本籍地の役所で戸籍謄本を取得すると、縦書きの書類に、横書きの文字で、氏名や生年月日等が記載され、その下のほうに、死亡についての記載がされます。これを、死亡の戸籍といいます。
同じ役所で、改製原戸籍なども発行してもらえることがありますが、多くの場合は、それ以前の本籍地の役所へ、改めて請求をおこなうことになります。
出生の戸籍
人は出生のときに、親の戸籍に記載されます。これを、出生の戸籍といいます。
その後、引っ越しなどによる転籍や、結婚、離婚、養子縁組などで、戸籍の場所や、筆頭者が変わっていきます。
その時々の戸籍は、その当時の市役所にしか保管されていませんので、これらを順番にたどり、収集していくことになります。
昭和の改製原戸籍と、平成の改製原戸籍
昭和の戦後しばらくした頃に、民法が改正された影響で、戸籍謄本の形が大きく変わりました。この当時の改製を、昭和の改製原戸籍といいます。
また、近年では、これまで横書きの書類に縦書きの手書き文字だったものが、コンピュータ化され、様式が変わりました。これを平成の改製原戸籍といいます。
これらも遺産相続手続きには必要な書類となりますので、もらさず、収集していきます。
戸籍謄本は何通必要?
戸籍謄本は意外と高額です。すべて集めると、軽く1万円くらいはかかります。これを何通も取得すると費用がばかになりませんので、基本的には1セット取得して、各機関へ提出後、原本を返してもらい、他の機関でも流用するようにします。
ただし、生命保険や自動車の手続きなどは、戸籍の原本を返してもらえない場合もありますので、そういった手続きがあるときは、その必要通数を、あらかじめ余分に取得しておくといいでしょう。
法定相続情報を取得すれば1セットでOK
パソコンなどで法定相続情報一覧図(家系図)を作成し、管轄の法務局へ申請すれば、
法定相続情報を発行してもらえます。
こちらは無料で何通でも取得可能ですので、パソコンが得意な方は、法定相続情報を利用すると便利です。
(参考)戸籍が揃ったら、相続関係図を作成し、法務局で法定相続情報を取得する
印鑑証明書は特に重要な必須アイテム
遺産相続の手続きは、すべて相続人の実印と印鑑証明書で進行されていきます。
亡くなられた方の印鑑はすべて無効なものになり、通帳の印鑑も無効になります。
印鑑証明書は3ヶ月や6ヶ月などの期限がありますので、一度にあまり多く取得せず、期限が過ぎたら取り直すくらいがちょうどいいでしょう。
一度の取得は2~3通程度で十分です。
実印または印鑑カードの紛失
登録したはずの実印、または、役所から発行される印鑑登録カードが見当たらないときは、
紛失として、再登録、再発行の手続きが必要になります。
お住まいの市区町村役場に、本人が行けば、その場で発行されます。
印鑑登録をしていない
相続手続きに、印鑑証明書は必須のアイテムです。
これがないと手続きが進みませんので、急ぎ、役所で印鑑登録をおこなってください。
印鑑は、どんなものでもかまいません。
既製品、三文判でも大丈夫ですので、どれかを実印にする、と決めて、登録をおこなってください。
登録されましたら、その場で印鑑証明書も発行してもらえます。
こちらも、ご本人が窓口へ行けば、その場で対応可能です。
代理人が窓口へ行くケース
ご本人が病床にあるなど、役所窓口へ行くことが難しいときは、
別の方が、代理人として登録することができます。
ご親族でも、まったくの第三者でも問題ありません。
ご本人から窓口へ行かれる方宛の委任所を準備して、ご本人住所地の市区町村役場で登録をおこないます。
代理人申請の場合は、いったん受付された後、ご本人宛に確認の書面が送付され、
後日改めて、その書面を持参して、登録されるケースが多いです。
市区町村により対応は異なりますので、ホームページなどで事前に確認をしてください。
不動産があるときは、不動産登記事項証明書と固定資産評価証明書を取得する
不動産は、管轄の法務局で登記簿謄本が管理され、その所在地の市役所または市税事務所で、固定資産税が管理されています。
不動産ひとつずつに、登記簿謄本と固定資産税評価証明書があります。これらは相続登記の申請に必要になりますので、不動産ごとに、準備します。
また、固定資産税評価証明書には、不動産ごとに具体的な評価額が記載されていますので、遺産分割協議の際の、基準のひとつにもなります。
金融機関に残高証明書を請求する
故人の預金口座の残額は、死亡日を基準とした残高証明書で把握します。
各金融機関ごとに、故人が所有していた口座のすべての残高証明書を取得することで、相続人が知らなかった定期預金や、他の支店での預金口座が見つかることもよくあります。
おもに相続税の申告や、遺産分割協議のときに、残高証明書を使用します。
ちなみに、相続税の申告では、死亡日前後のお金の入出金も課税対象となることがありますし、遺産分割協議の中で、不必要な疑いなどを払拭するためにも、可能な限り、預金通帳などで、お金の流れを把握することも重要になります。
遺産分割協議の内容は、遺産分割協議書としてまとめます。
住民票は意外と必須アイテムではない
住民票は住所を公証する書類ですが、銀行手続きでは必要ありません。
不動産相続登記をおこなうときに、亡くなられた方の住民票除票と、不動産を取得される方の住民票が必要になります。
遺産分割協議書
こちらも、意外と必須アイテムではありません。
銀行、証券会社などに、遺産分割協議書の提出は不要です。
不動産を法定分割以外の方法で相続するときは、その旨を記載した遺産分割協議書が必要になります。
遺言書がある場合
故人が生前に遺言書を残されていた場合は、その遺言書にもとづいて、各種遺産相続の手続きを進行することになります。
遺言書が自筆遺言書であれば、家庭裁判所での検認が必要になり、全相続人が立会いのもと、家庭裁判所で遺言書を開封もしくは開示することになります。
検認が終了すると、家庭裁判所で遺言の検認済み証明書を発行してもらい、各種相続手続きに使用します。
遺言書が公正証書遺言書であれば、裁判所の検認は不要で、謄本を利用して、各種遺産相続の手続きを進行していきます。
ちなみに、遺言書で遺言執行者が指定されているときは、その指定された方が、各種遺産相続の手続きを進めます。
遺言執行者の指定がないときは、別途家庭裁判所に対して、遺言執行者の選任をもとめることができますが、とくに選任をしなくても、手続きが進むこともありますので、個別に判断をしていくことになります。
相続人に未成年者がいる場合、審判書を取得する
未成年者は有効な遺産分割協議ができないため、保護者や親族などが代わりに遺産分割協議をおこないます。
ただし、たとえば父親が死亡したときは、母親と未成年の子が共同で相続人となりますが、母は自身の相続人の立場と、未成年の子の保護者としての立場を、兼任することができません。
その場合は、家庭裁判所に対し、未成年の子のための特別代理人の選任を求め、その選任された代理人と母とで、遺産分割をおこなうことになります。
無事に特別代理人が選任されると、その旨の審判書が家庭裁判所から発行されます。
ちなみに、特別代理人は、未成年の子の祖父母など親族を、候補者として推薦することができます。
各手続き機関ごとに必要書類を収集する
上記の公的書類が準備できましたら、各手続き機関にて申請をおこないます。
たとえば銀行であれば各銀行ごとに、役所関係であれば各役所ごとに、その他証券や会員権、あらゆる手続き機関ごとに、専用の書類が用意されていますので、それらを順番に収集し、全相続人が記入押印、上記の公的書類を添付して、各機関へ提出する流れになります。