故人が残された遺産を、相続人同士がどのように遺産分割し、相続するかを話し合うのが、遺産分割協議です。
これを遺産分割協議書という書面にし、各相続人が署名押印します。
さまざまなメデイアなどで紹介されているため、遺産分割協議書というコトバは、多くの方がご存ですが、実際にそれがどんな書類であるかとなると、検討もつかないというケースも少なくありません。
相続人全員で決定した分割内容を書面にします
相続が発生すると、実にさまざまな事務手続きが発生しますが、
とりわけ、遺産相続となりますと注目されますのが、遺産分割です。
遺産分割とは【完全版】~遺産相続の発生から、遺産分割協議の成立、遺産分割協議書の作成まで
故人が残された不動産、銀行預金、有価証券など、金銭評価が可能な資産をリストアップし、財産目録を作成します。
その後、相続人全員で話し合いをおこない、誰がどの資産を相続するのか、どのように分けるのかを決定していきます。
そうして遺産分割協議が成立しましたら、その内容を書面にし、相続人全員が署名と実印の押印をおこない、印鑑証明書を添付します。
- 相続人全員の了承が必要
- ひとりでも欠ける、もしくは同意しない人がいると無効になります
遠方だったり、あまり連絡を取り合ってない親族同士だと時間がかかることもありますが、このような点に注意しながら遺産分割協議をし、書面にしないといけません。
全員が同意をすることが非常に重要となります。
印鑑証明書
上記にも出てきました、印鑑証明書ですが、必ず添付が必要となります。
遺産分割協議書に押印された印鑑が自治体に登録済みの「実印」であることを証明するために提出します。
これにより、ご本人が自らの意思で遺産分割協議書に押印したことを証明することができます。
また、相続人全員の印鑑証明書が必要となるので注意しましょう。
期限
よく3ヶ月以内のものなど聞きますが、印鑑証明書そのものに有効期限があるわけではありません。
各機関、提出先が定めているものとなります。
不動産の相続登記や相続税の申告においては、印鑑証明書の期限は無いものと考えて良いでしょう。金融機関などは定めているところは多いので、提出先によっては要確認となります。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書の書き方に法的な決まりはありませんが、無効にならないよう、不備のない遺産分割協議書が必要ですので、書き方のポイントを押さえておきましょう。
パソコンでもOK
手書きでもパソコンでもどちらでも大丈夫です。また、用紙なども特に決まりはありません。
ですが、パソコンの方が綺麗に見えますし、パソコンができる方はパソコンでの作成をおすすめします。
題名と日付
何の用紙かわかるように初めに『遺産分割協議書』と題名の記載をしておくと良いでしょう。
また、作成した日付も忘れずに記載しましょう。
被相続人の情報
亡くなられた方の名前や住所、本籍地、亡くなった日などを記載します。
誰がどの財産を相続するか
遺産分割協議書では、誰がどの財産を相続するかを明確にする必要があります。
名前だけでなく、「妻 相続 花子」など続柄も記載します。
参照:続柄
- 預貯金
- 株式
- 不動産
- 債務・負債
銀行名、支店名、口座番号、名義人の名前まで細かく書きましょう。
証券会社名や発行会社名、株式数などを記載します。
登記簿に記載通り書きます。相続した不動産の名義変更の手続きを行う際に法務局が受理してくれないからです。
また、自宅などと曖昧な書き方はしないようにしましょう。
土地なら所在地、地番と土地の種類、地積を書き、建物の場合には所在地、家屋番号、建物の構造、面積を書きます。
不動産全部事項証明書の上に記載の表題部をそのまま書くと良いでしょう。
プラスの財産だけでなく、負債のようなマイナスの財産も記載します。
(債権者や債務残高、契約内容、について)
全員による署名押印
最後に全員による署名押印が必要となります。必ず実印で押印しましょう。
1人でも欠けると無効になりますので注意しましょう。
その他注意点
- 遺産分割協議書が複数ページにわたる場合は、契印を押すと良いでしょう。
少し大変ですが、これも相続人全員の実印が必要となります。 - 遺産分割協議書は、人数分の文書を作成し、各相続人が1通ずつ保管します。
- 言った言わないというトラブルを防ぐ
- あとから、やっぱりこうしたい、などの意見の変更を防ぐ
- 第三者に対し、遺産分割協議が正式に成立したことを証明する
遺産分割協議書は何に使う?
不動産の相続登記には遺産分割協議書が必要であり、相続税申告でも必要になるときがあります。
故人が残された不動産を、特定の相続人が相続するときは、所有権移転の登記をするために、遺産分割協議書を作成し、法務局に提出しなくてはなりません。
これは、不動産を誰が相続するかを証明するために必要となります。
法務局提出用として、相続不動産についてのみ記載していればよく、預金をどうするとか、不動産以外の遺産については記載する必要がありません。
つまり、法務局に提出用として遺産分割協議書に不動産部分のみを記載して提出しても大丈夫ということになります。
相続税申告をおこなう場合
相続税申告をおこなう場合で、法定分割以外の割合で分割するときは、遺産の全部について記載した遺産分割協議書が必要になってきます。
相続税の申告が必要になるときは、各人が取得した遺産の割合に応じて、納めるべき相続税の金額が変わりますので、誰がどれだけをどのように相続したかを証明するために、遺産分割協議書を作成して、税務署に提出しなくてはなりません。
銀行には遺産分割協議書を出さなくて良い
凍結された故人の銀行預金を相続するためには、各相続人の様々な書類を提出しなくてはなりませんが、遺産分割協議書は必ずしも必要ではありません。
金融機関としては、相続人全員が、故人の預金を解約することに同意している確認が取れればよく、解約されたあとに、それがどのように分割されるかまでは、関与しないためです。
そのため、遺産分割協議書よりもむしろ、各金融機関独自の書式に、全員が署名することを求められます。
遺産分割協議書が不要なケース
- 相続人が1人
- 遺産が現金や預金だけ
- 遺言書がある
- 法定相続分で分割
その人が全ての遺産を相続し、分割しないので、そもそも遺産分割協議書は必要ありません。
相続財産に不動産などが含まれていない場合、遺産分割協議書は作成しなくても大丈夫です。
法的に有効な遺言書があり、遺言書に書かれた内容に沿って遺産分割をする場合は、遺産分割協議書は必要ありません。
ただ、相続人同士の話し合いで遺言書通りに遺産分割しないということであれば、遺産分割協議書を作成します。
また、遺言書には、自筆証書遺言と公正証書遺言があります。
自筆証書遺言は、家庭裁判所にて検認を受けたものでないと有効ではありませんので注意しましょう。
民法で法定相続分というものがあり、これは、各相続人の相続割合のことです。
例えば、配偶者と子2人(長男・次男)の場合、配偶者が1/2、長男1/4、次男1/4となります。
このように法定相続分で分割する場合も作成の必要はありません。
遺産分割協議書の作成は、絶対必要ではない
意外かも知れませんが、遺産分割協議書は別に作成しなくても問題ありません。
そもそも遺産分割協議書とは、相続人同士でおこなった遺産分割協議の内容を、第三者が見ても分かるように、もしくは当事者同士の言った言わないを防ぐために、作成するものです。
特にどこに提出するという性質のものでもないので、ご親族の関係が良好で、後日の争いも起こりようがないような間柄であれば、作成しなくても問題はなく、もちろん作成しても構いませんが、それはお互いに作成したものを、ただ保管しておく、というだけのものになります。
とはいえ、必要な場面もあるかと思います。
必要か必要でないか、相続人同士でよく話し合いをしましょう。
何をさておいても協議書、という考えは不要
インターネット上でも、遺産分割協議書が絶対に必要であるかのような記述が散見されます。
遺産相続に熱心に取り組みされる方ほど、そういった情報を受け、何にも優先して遺産分割協議書を作成しなくてはならないと、強くお考えになられている方も多くいらっしゃいますが、
実務上は、そんなに求められているものではないということもご認識いただき、
- 遺産分割協議書とは、必要があれば、作成すればよいものであること、
- 書面よりも、相続人同士がお互いを尊重して、遺産分割協議をきちんとおこなうこと
以上が、重要な考え方であるかとおもいます。