期限

人の死後におこなうべき手続きは、非常に煩雑に、多岐にわたります。

市役所、年金、生命保険、公共料金、クレジットカード、携帯電話、インターネット、自動車、バイク、銀行、信託銀行、証券会社、法務局、、、など。

これらの手続きは、いつまでにやらなければならないのでしょうか。

▼こちらのページは、動画でもご覧いただけます。
【前半】

【後半】

 

 

遺産相続手続きの期限は、あってないようなもの

間に合わない

市役所や年金事務所などでおこなう手続きには、7日以内、14日以内、など、とても期限に余裕のないものがあります。

(参考)東京都中央区ホームページ , 日本年金機構ホームページ

当センターへのお問い合わせにも、期限に間に合わない!ということでご連絡をいただくケースが多いですが、

実はこれらの期限はあってないようなもの、期限を過ぎても問題なく手続きができますし、罰則やペナルティもありません。(不動産相続登記は例外です、3年以内におこなってください)

令和6年(2024年)4月1日より、相続登記が義務化され、期限が設けられました。
詳しくはこちらをご参照ください。

年金は遅れて申請しても、きちんと亡くなられた日まで遡って支給されます。もらいそびれることはありません。

※時効はあります。あまりに年数が経つと権利が消滅しますので注意してください。

銀行預金も、法的には5年や10年などの期限がありますが、期限が過ぎたからと言って銀行が払い出しに応じないとか、国に没収されてしまうということも、今のところはありません。

 

相続税の申告と、準確定申告、相続放棄は要注意

締め切り

注意しなければならないのは、相続税の申告と、準確定申告、相続放棄です。

  • 相続税の申告は、亡くなられた日から10か月以内
  • 準確定申告は、亡くなられた日から4か月以内
  • 相続放棄は、亡くなられた日から3か月以内

(参考 国税庁ホームページ)相続税の申告と納税 , 納税者が死亡したときの確定申告

(参考)相続放棄について 民法915条

※注意※
正確には亡くなったことを知った日から起算しますが、証明が必要な場合もありますので、亡くなられた日を起算日と考えると安全かとおもいます。

これらは期限を過ぎると受付してもらえなかったり、追徴課税などのペナルティが発生する場合があります。

相続税の申告が必要な場合や、または多額の借金がある場合は、すみやかな対策と対応が必要です。

相続放棄の期限 【3ヶ月以内】

相続放棄

相続放棄は、故人の死亡日から3ヶ月以内に申請をおこなわなければなりません。

(参考)相続放棄について 民法915条

故人が残されたご資産よりも、負債や債務のほうが多額であることがあきらかなときは、すみやかに相続放棄の申請をおこなってください。

このときに注意しなくてはいけないのが、たとえわずかであっても故人の資産を処分してはいけないということです。

たとえば故人が残された自動車を、もう誰も乗らないからといって廃車や売却処分などをしてしまうと、相続を承認したものとみなされ、原則として相続放棄ができなくなってしまいます。法律用語で 「単純承認」 といいます。

相続放棄とは、故人が残したプラスの資産も、マイナスの資産も、何もかも一切を相続しない、という制度です。

一部の資産だけを相続して、負債は相続放棄する、というようなことはできません。

先の例で、たとえ資産価値がないような自動車であっても、故人の資産をいったん相続してから処分したものとみなされてしまいますので、相続を放棄する、もしくは放棄する可能性があるというときは、安易に故人の資産を処分しないよう、とくに注意してください。

なお、3ヶ月という期限の起算点ですが、判例では、故人の死亡を知った日や、負債があることが判明した日から3ヶ月以内であれば、相続放棄が認められるケースもございます。

また、故人の負債がどれくらいあるか分からないときは、調査をおこなうための処置として、3ヶ月の期間を伸長してもらえる制度もございます。

死後3ヶ月を過ぎてしまっても、相続放棄が認められる場合もありますので、決してあきらめないでください。

限定承認について 【3ヶ月以内】

法律上の制度に、限定承認というものがございます。資産と負債がわからないときに、資産の範囲内のみで支払いをおこない、それ以上の負債は相続しない、という制度です。

たとえば故人と疎遠であったり、借り入れをしていたとおもわれるケースではすごく有益な制度のように感じますが、実務上は、ほぼ利用されていないという点に注意が必要です。

理由は、制度が非常に複雑で、時間がかかるためとおもわれます。

債権者に通知し、官報に記載し、相続財産の管理人を選任しなくてはなりません。管理人は申し出のあった債権者に財産を分配し、残った財産があれば相続人が遺産相続します。

かかる費用と時間に対して、得られる効果との割合があわないというのが実情ではないでしょうか。

相続実務では、相続放棄の3ヶ月の期間を延長する制度もございます。

安易に限定承認に想いを馳せるよりも、たっぷりの熟慮期間を用意して、故人が残されたプラスとマイナスの財産を調査し、その上で、相続されるか、相続放棄されるかをご検討いただくことが現実的かとおもいます。

 

準確定申告の期限 【4ヶ月以内】

準確定申告

通常の確定申告は、その年の収入に関して、翌年の2月~3月に確定申告をおこないます。

ただし、確定申告をおこなうべき納税義務者が亡くなられたときは、故人の死亡を知った日から4ヶ月以内に申請をおこなわなければなりません。

(参考 国税庁ホームページ)納税者が死亡したときの確定申告

もともと個人事業や自営業など、何らかの収入のある方や、株式や投資信託などの証券をお持ちで、配当金の確定申告をご自身でされていた方などは、例年通りの確定申告を急いでおこなうことになります。

所得税の準確定申告が必要なケース

  • 個人事業をおこなっていた
  • 証券会社に一般口座を保有していた
  • 不動産を賃貸し、家賃収入を得ていた
  • 不動産を売却し、収入を得た
  • 複数の所得があった

準確定申告が必要ではないが、申告すれば還付の可能性があるケース

  • 年金を受給していて、源泉徴収されていた
  • 高額の医療費を支払っていた

 

ここで注意が必要なのは、これまで確定申告をされてこなかった方で、生前に不動産の売却をおこなっていた場合です。

不動産を売却すると、その売却代金が所得とみなされますため、確定申告が必要になります。税務用語で 「譲渡所得」 といいます。

ご先祖様から相続した不動産を売却した場合や、低い価格で購入された不動産を当時よりも高い価格で売却された場合などは、課税されるケースが多いです。

期限内の申告を失念されると、申告を終えられるまでの超過期間に応じて、延滞税などの追徴課税が課されますので、特に注意してください。

 

相続税申告の期限 【10ヶ月以内】

税金

相続税の申告と納税は、故人の死亡日から10ヶ月以内に申請をおこなわなければなりません。

(参考 国税庁ホームページ)相続税の申告と納税

平成27年1月1日以降に死亡された方より、基礎控除額が下がり、実質的な増税となりました。

これまでは相続税の申告と納税が不要であったご家庭にも、相続税が課税されるケースが増大しています。

相続税の申告は、いわば人が生きた一生の収支の総決算であるといえます。

死亡日現在の資産が課税対象になりますが、その前後の資産の収支も、課税対象となる場合があります。

うっかり申告を失念されますと、こちらも延滞税などの追徴課税の対象となってしまいます。

当センターでは相続税の申告を専門におこなっている税理士がご対応をさせていただきますので、相続税が課税される可能性のある方は、なるべく早期に、ご相談をいただくようお願いします。

贈与税の期限

贈与を受けられた場合、本来であれば、贈与を受けられた方は、翌年の3月15日までに贈与税の申告をおこなう必要がありますが、贈与者が贈与をした年に亡くなられたときは、相続税の対象となりますため、贈与税の申告は不要になります。

ただし、相続財産を取得されない場合は、原則どおり贈与税の対象になりますので注意してください。

また、相続時精算課税制度を過去に利用されている方も、申告に注意が必要です。

 

遺言書の期限 【すみやかに】

遺言書

故人が遺言書を残されている場合は、何よりも先に確認をおこなう必要があります。

特に期限はございませんが、名義変更や解約手続きなどを完了してから遺言書が発見された場合、遺産分割の内容が覆される場合もありますので、まずは遺言書の有無を、ある場合は内容を確認してから、各相続手続きに着手するようにします。

自筆証書遺言の場合

遺言者(故人)の最後のご住所地を管轄する家庭裁判所で、遺言書の検認をおこないます。

故人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、その他、相続人を確定させるための書類を添付して、家庭裁判所へ遺言書の検認を申し立てます。

受付をされましたら、後日、検認の実行日が決定されますので、原則として相続人全員が出席し、遺言書の内容を確認します。封書で封印されているときは、このときにはじめて開封します。検認手続きを経ずに勝手に開封すると、罰則の規程もございますので注意してください。

検認の出席は絶対?

全相続人に対して、遺言書の検認日と出席のお知らせが家庭裁判所より発送されますが、ご高齢、多忙など、もっともな理由はもちろん、興味がない、という個人的な事情であっても、欠席をすることは自由です。

また、当日どうしても出席できないが、遺言書の内容は知っておきたい、という場合も、家庭裁判所に対して請求をすれば、内容のコピーを発行してもらえますので、あとから確認することも可能です。

裁判所から郵便物が届いたら、誰もが身構えてしまうと思いますが、出席するか欠席するかを選択できますし、欠席しても不利益はございませんので、ご安心をいただけたらとおもいます。

ただし、遺言書を保管している申立人だけは「絶対出席」です。当日は遺言書の原本を持参してください。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言は、裁判所の検認が不要で、そのまま有効な法律文書として、各種名義変更や解約などの手続きに使用することができます。

遺言書を保管していない、他の相続人へ通知されることもありませんので、たとえば遺言書を保管している相続人が、財産をすべて相続する、という内容であれば、他相続人に協力をしてもらうことなく、ご自身だけで、解約や名義変更を進めることができます。

なお、他相続人が公証役場へ問い合わせをすれば、遺言書の内容を確認することができますので、完全に内緒にすることはできません。

遺言書があるのかないのか、分からないとき

自筆証書遺言の有無は、故人の自宅や施設、入院されていた病室など、身の回りを探します。銀行の貸金庫の中にあったり、誰かに預けているケースもあるかもしれません。お心当たりをひとつずつ探していくしかありません。

公正証書遺言の有無は、公証役場へ問い合わせをすることで確認ができます。公証役場で電子化され、データ検索ができますので、故人の死亡した事実と、申立人が正当な相続人であることを証明できる戸籍謄本等を用意して、お近くの公証役場で確認をおこないます。

全国どこの公証役場でも確認ができます。

相続人以外の人が公証役場へ行くときは、相続人からの委任状を用意すれば、申請が可能です。

 

大切なのはご遺族のお気持ち

リミット

お身内を亡くされ、悲しみの中でおこなうのが、遺産相続の手続きです。

葬儀、法要のお手配から、親戚や友人、上司、お付き合いのある方々へ連絡をしたり挨拶をしたりと、ご遺族は本当にお忙しく、慌ただしい日々をお過ごしになられることになります。

故人のご供養のために優先するべきことの順序を決めて、出来ることから順番に、慌てることなくご対応いただくことが重要かと思います。

ただし、あまりに長期間、手続きを放置されると、健康保険の埋葬費はもらえなくなりますし、何かと問題が生じる場合もあります。

遺産相続手続きを、何を差し置いても優先する必要はありませんが、ある程度お気持ちが落ち着かれましたら、できることから少しずつ、故人が残されたご資産を大切に継承されていくことが、故人のご供養にもつながるのではないかと、当センターでは考えています。

 

遺産相続の手続きと期限の一覧

市区町村役場の手続き

期限 備考
死亡届の提出
死亡届
7日以内 葬儀社が代行してくれることが多いです
– 火葬許可申請書の提出 7日以内 死亡届と同時に提出します
健康保険の手続き
健康保険証
14日以内 国民健康保険、後期高齢者医療保険をお持ちの方
※会社員の方は年金事務所または会社で手続きをおこないます
– 葬祭費の申請 2年以内 葬儀の領収書が必要です
– 高額療養費の申請 2年以内 入院費等の領収書が必要な場合があります
介護保険の手続き
介護保険
14日以内 保険料の還付を受けられる場合があります
固定資産税の手続き
固定資産税
相続人が複数人のときは、今後の納税者として、相続人代表者指定(変更)届を提出します。未納があるときは期日までに納付します
市民税の手続き
市民税
相続人が複数人のときは、今後の納税者として、相続人代表者指定(変更)届を提出します。未納があるときは期日までに納付します
世帯主変更の手続き
世帯
世帯主が亡くなられた場合で、今後は2人以上の世帯になるときに提出します。1人世帯になるときは、提出不要です

 

年金事務所の手続き

期限 備考
年金受給停止の手続き
年金
10日以内 年金を受給されている方が亡くなられたときに提出します
未支給年金の申請
未支給年金
5年以内 亡くなれた月までの年金が支給されます。請求ができるのは、生計を同じくしていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他3親等内の親族)、内縁の方も受給できる場合があります
遺族年金の申請
遺族
5年以内 国民年金、厚生年金により規定は異なりますが、配偶者、子、父母などが遺族年金を受給できる場合があります
死亡一時金の申請 2年以内 年金受給前に亡くなられたときに、支給される場合があります。
共済年金(平成27年10月から厚生年金に統一)の手続き 公務員をされていた方、旧国鉄、電電公社などにお勤めされていた方に該当する場合があります
企業年金の手続き
企業年金
お勤めの企業が独自の年金制度に加入している場合があります。年金事務所とは別に手続きが必要ですので注意してください

※年金の時効について、参考URL http://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/shikyu-chosei/20140421-01.html (日本年金機構)

 

日常生活の手続き

期限 備考
公共料金の手続き
公共料金
電気、ガス、水道などの停止または名義変更
NHK
NHK
意外と忘れがちな手続き。空家になるときは解約が可能です
NTT
NTT
固定電話には加入権があり、相続の対象になります
携帯電話
スマホ
ドコモ、au、ソフトバンクなど、各携帯電話ショップでの解約手続き。
名義変更も可能
インターネット
インターネット
プロバイダの解約または名義変更
運転免許証
運転免許証
警察署に返納、ただし、顔写真もあるので、保管用に返してくれるケースもあります
クレジットカード
クレジットカード
カードを発行している会社へ連絡し、解約します。電話口で解約できる場合と、専用の解約用紙を提出する場合があります

 

財産の相続手続き
(銀行、証券会社、生命保険、自動車、退職金、不動産など)

期限 備考
銀行の手続き
銀行
各銀行の支店窓口でおこないます。解約し、代表相続人が一括して受取るケースが一般的です。

名義変更もしくは各相続人ごとに分配する場合、金融機関によって対応ができる場合とできない場合があります。

詳しくはこちら

証券会社の手続き
証券会社
各証券会社の支店窓口でおこないます。銘柄ごとに相続人を指定し、受領することが可能です。

換金する場合も、いったん相続人の証券口座へ移管し、その後に売却の手配をおこないます。相続人が証券口座をお持ちでないときは、新しく口座を開設する必要があります。

株、投資信託などは、証券会社の口座に保管されています。

※株の配当金について
配当金は証券会社ではなく、上場株式を管理している信託銀行で手配をおこないます。株主総会の時期などにより、手続きの開始が大幅に遅れたり、忘れたころに通知がくることもあります。

詳しくはこちら

生命保険の手続き
生命保険
各生命保険会社の支店窓口、もしくは担当者へ連絡をして手続きをおこないます。

入院などの医療保険の場合、病院の診断書が必要です。

死亡保険は死亡診断書(死亡届の右ページ)で対応できる場合があります。

生命保険は受取人固有の財産であり、遺産分割の対象にはなりませんので注意してください。

自動車の手続き
自動車
管轄の陸運局で車検証の名義変更をおこないます。

故人と同居でない場合は車庫証明書が必要です。

軽自動車の場合は郵送でも手続き可能です。

詳しくはこちら

ゴルフ会員権
ゴルフ会員権
ゴルフ場の管理会社へ連絡をおこないます。

保証金などの預り金は原則として返還されますが、ゴルフ場ごとに独自の規約がありますので、ルールに従い、手続きをおこないます。

返還が数年後、もしくは事実上不可能であるケースも少なくありません。

死亡退職金
退職金
お勤めされていた会社の総務課や人事課などで手続きをおこないます。

独自の年金や給付金がある場合もございますので、担当者に指示に従います。

不動産
不動産
3年以内
(令和6年4月1日より)
法務局で名義変更をおこないます。相続人が複数いて、誰か1人の名義にする場合などは遺産分割協議書が必要になります。

詳しくはこちら

住宅ローン
住宅ローン
団体信用生命保険(団信)に加入されている場合は、亡くなられた日以後の支払いが不要になります。手続きが遅れ、支払ってしまった場合でも、きちんと返金されますのでご安心ください。
火災保険、自動車保険
保険証券
加入している保険会社で解約または名義変更をおこないます。

手続きをしない場合でも、事故が発生したときは原則として保険金が受領できますが、不測の事態に備えるためにも、きちんと手続きをされることをおすすめします。