最終更新2025.2.19 行政書士 阿部 勉

自筆の遺言書は本人が死亡したあと、家庭裁判所で遺言書の検認を受ける必要がございます。
このページでは検認についてご説明します。

遺言書の検認

故人が生前に自筆の遺言書を残されていたとき、遺言書を保管、もしくは発見されたご遺族等は、その遺言書を家庭裁判所に提出して検認を受ける必要がございます。

検認の申請手順

申立人

  • 遺言書の保管者
  • 遺言書を発見した相続人
  • いずれかが申立人となり、家庭裁判所へ申請をおこないます。

    申立先(管轄裁判所)

  • 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所
  • 亡くなられた故人が最後にお住まいであった住所地(住民票の住所地)を管轄する家庭裁判所へ申請します。

    裁判所の管轄はこちら

    必要書類

  • 申立書
  • 家庭裁判所発行のひな型ダウンロードはこちら

  • 法定相続情報証明書
  • 故人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本などを用意し、法務局へ申請します。
    法定相続情報を取得せず、戸籍のまま家庭裁判所へ提出することも可能です。

  • 相続人の戸籍謄本
  • 遺言書1通につき、収入印紙800円分
  • 郵便切手
  • 金額と枚数は管轄の家庭裁判所により異なります。事前に裁判所へ確認をします。

    (コラム)遺言書の検認にかかる時間、およそ1〜2ヶ月

    戸籍謄本を揃えたり、申請に必要な書類を準備するのに数週間から1ヶ月、裁判所に提出して受理されるまでの内部処理時間、その後、期日を決めて裁判所で遺言書を開封します。

    この一連の流れが必要なため、準備から完了までおよそ1〜2ヶ月かかります。

    その間、銀行の解約や不動産の名義変更などはストップします。

     

    自筆遺言書が無効になるとき

  • 自筆でないとき
  • 偽造であるとき
  • 内容が不明瞭であるとき
  • 遺言書としての要件を満たさないとき
  • 遺言作成時に意思能力がなかったことが明白なとき
  • 自筆遺言書は、すべて本人の自筆で、第三者が見ても内容が分かるよう明確に、記載する必要がございます。

    そして本人がお名前を署名し、印鑑を押印(実印でなくても可)、作成した日付を明確に記載しなくてはなりません。

    もし不備があり、自筆遺言書が無効となったとき、遺言書を書かれたご本人が亡くなられた後では、もう、どうしようもありません。

    費用やお時間がかかっても、公正証書を作成されることをおすすめします。

    公正証書遺言 作成サポート

    遺言書の一部無効

    内容が不明瞭のときに、遺言は無効になりますが、他の要件を満たしている場合、すべてが無効になる訳ではありません。
    この部分は内容が分かる、この部分は内容が分からない、というとき、内容が分かる部分についてのみ有効となり、遺言を実行することができます。

     

    (コラム)遺言書が無効になった実例
    まず非常に多いのが、番地の記載ミスです。
    不動産を特定し、誰に相続させると記載しても、番地が異なっており、無効となった例です。
    特に番地には、市役所が設定する住所表記と、法務局が設定する地番表記があり、それぞれの表記番地が異なっている場合もありますので注意が必要です。

    次に、要件不備。
    これは、押印がされていなかったり、日付がなかったりすると無効になります。

    ほかには、表現が独特で、第三者が見たときに、結局どうすればよいか分からない、という場合も意外とよくあります。
    例えば2分の1を誰々に相続させる、とだけあり、残りの2分の1について記載がない場合、
    もしくは何の2分の1か特定されていない場合、などもございました。

    前者は、記載のある2分の1については遺言通り実行されますが、残りの2分の1については法定相続人が通常通りの相続手続きをしなくてはなりません。
    後者は、内容が不明のため、その箇所については無効になりました。

    参照:知っておきたい遺言書のこと。無効にならないための書き方、残し方

     

    検認したのに遺言書が無効になる?

    これは非常に分かりにくく、多くの方が誤解されることなのですが、遺言書の検認は、その遺言書が有効であることを証明する作業ではございません。

    遺言書の検認は、その遺言書が確かに存在するということを、裁判所と、法定相続人が、確認する、という作業です。

    検認を受けると裁判所の印が押された書面が発行されますので、一見、裁判所がその有効性を保証したように見えますが、決してそうではなく、遺言書の存在が証明されただけであり、有効であるかどうかは別の問題になるということを注意してください。

     

    遺言書の種類

    1. 公正証書遺言 ・・・ 公証役場で作成します
    2. 自筆証書遺言 ・・・ ご自身が便箋などに手書きで作成します
    3. 秘密証書遺言 ・・・ 公証役場で作成します

    参照:遺言書の種類

    1,公正証書遺言

    公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめたものを、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって、遺言公正証書として作成します

    公正証書遺言のメリット

  • ほぼ確実に、有効な遺言書を作成 することができます
  • 自筆遺言は本人がすべて自分で作成するため、ミスがあると無効になってしまうリスクありますが、公正証書は公証人が作成してくれるので、ミスのために無効になることは、ほぼ、ありません。
    (本人の意思能力が不十分だった、などとして、裁判で認定されると無効になる場合があります)

  • 本人の 自筆が不要 になります
  • お名前の署名のみ必要です。それも難しいときは相談の上、個別対応してもらえる場合があります。

  • 公証役場へ本人が行くことが難しいときは、公証人に自宅や施設に出張してきてもらうことができます
  • 別途出張費用がかかります。

  • 公証役場が原本を保管してくれるので、万一、本人やご相続人がその写し(正本や謄本)を 紛失しても、公証役場で再発行 ができます
  • 本人が亡くなられたあと、相続人は、全国の公証役場でその写し(謄本)を発行してもらうことができます。

  • 相続人が遺言書の存在を知らなくても、公証役場で故人が生前に 作成していたかどうかを調べることができます
  • 本人が亡くなられたあと、相続人は、全国の公証役場で遺言の有無を調べることができます。

    参照:遺言検索

    公正証書遺言のデメリット

  • 公証役場への手数料がかかります
  • 事前の必要書類の準備が必要です
  • 2,自筆証書遺言

    自筆証書遺言は、遺言者が、紙に、自ら遺言の内容の全文を手書きし、かつ、日付および氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成します。

    自筆証書遺言のメリット

  • ご本人が思い立ったときに、いつでも自由に作成 することができます
  • すべて自分で作成すれば、費用はかかりません
  • 自筆証書遺言のデメリット

  • すべてご自身が自書、自筆する必要があります
  • 記載ミスがあるとその部分は無効になります
  • 形式のミスがあると遺言すべてが無効になります
  • 紛失すると、遺言を実行することができません
  • 家庭裁判所での検認が必要です
  • 参照:自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

    3,秘密証書遺言

    秘密証書遺言は、遺言者が、遺言の内容を記載した書面に署名押印をし、これを封筒に入れて、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印をした上、公証人および証人2名の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申し述べ、公証人が、その封紙上に日付および遺言者の申述を記載した後、遺言者および証人2名とともにその封紙に署名押印をすることにより、作成します。
    秘密証書遺言は、自筆証書遺言と異なり、自書である必要はないので、遺言書は、パソコン等を用いて文章を作成しても、第三者が筆記したものでも、差し支えありません。

    秘密証書遺言のメリット

  • ご自身が自書、自筆する必要がなく、パソコン等で作成 することができます
  • これが一番のメリットかとおもいます。

  • 通常の公正証書遺言よりも、公証人手数料がお安く なります
  • 公証人手数料は1万1000円です。

  • 公証役場へ本人が行くことが難しいときは、公証人に自宅や施設に出張してきてもらうことができます
  • 別途出張費用がかかります。

  • 相続人が遺言書の存在を知らなくても、公証役場で故人が生前に 作成していたかどうかを調べることができます
  • 本人が亡くなられたあと、相続人は、全国の公証役場で遺言作成の有無を調べることができますが、遺言書の内容はわかりません。

    秘密証書遺言のデメリット

  • 内容を公証役場が確認しないため、内容に記載ミスがあるとその部分は無効になります
  • 公証役場への手数料がかかります
  • 事前の必要書類の準備が必要です
  • 紛失すると、遺言を実行することができません
  • 家庭裁判所での検認が必要です
  • 参照:秘密証書遺言には、どのような問題点がありますか?