年金を受給されている方が亡くなると、先月分や今月分の年金が、未受給のままになってしまうケースがあります。
その場合は、受給権のある遺族などが申請をすることで、未支給年金として、受給できるケースがございます。
未支給年金とは
未支給年金とは、本来、ご本人が受給するはずであった年金を、受給しないまま亡くなられたときに、そのご遺族が、代わって受給できる制度です。
年金は、偶数月に2か月に1回支払われるため、未支給となる分が発生します。
支給対象期間
亡くなった受給者が受け取る予定だった年金(死亡月分まで)が対象です。
受給者が死亡した翌月以降の年金は支給されません。
注意点
支給年金は、請求しないまま5年が経過すると時効となり、受け取りの権利が消滅します。
亡くなった方の死亡届を提出した後、早期に手続きを行うことが推奨されます。
未支給年金は相続財産ではない?
結論から申しますと未支給年金は相続財産ではありません。これは法律で明確に規定されており、未支給年金は受給権を持つ親族に対して、「請求権のある者」に支払われるものです。
未支給年金と相続財産の違い
未支給年金
- 亡くなった年金受給者が受け取るはずだった年金のうち、死亡時点までの未払い分
- 続手続きとは別の手続きで請求します
相続財産
- 人が生前に所有していた財産(現金、不動産、預貯金など)
- 相続人が法定相続分や遺言書に基づいて分配
- 相続財産として全相続人で分割する形ではなく、請求権者を明確にします。
未支給年金が相続財産とならない理由
未支給年金は、相続制度とは独立した特別の給付金とみなされます。これは、法律(年金法)で次のように定められているためです。
支給要件
- 未支給年金は、受給権を持つ本人に対して支給される権利であり、死亡とともにその権利は消滅します。
- 死亡時までに発生していた未支給分については、生計を共にしていた遺族が代わりに請求できます。
公平性の観点
- 未支給年金は、あくまで亡くなった受給者と生計を共にしていた遺族の生活を支える目的で支給されるものです。
注意点
遺産分割協議の対象外であり、請求者が単独で受け取るため、分割できません。
また、請求権者が未支給年金を受け取った場合、他の相続人との間で不公平感が生じる可能性があるため、事前に説明をしておくことが望ましいでしょう。
未支給年金の申請者
故人の未支給年金の申請は、
- 配偶者(婚姻事実も含む)
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- それ以外の3親等以内の親族
の順で、申請の権利者となります。
先の順位者がいないときに、後の順位者が権利を得ます。
未支給年金の申請者となる条件
生計を一にしていたこと
- 亡くなった年金受給者と居たか、または生活費の一部でも支えていた親族が対象です。
- 居住していなくても、生活費を援助していたなど「生計を一にしていた」とみなされれば申請可能です。
注意点
同順位の親族が複数いる場合は、代表者を1名選んで申請する必要があります。
例えば、子供が複数いる場合、1人が代表して申請します。
未支給年金の申請書類
未支給年金を申請する際には、以下の書類が必要となります。
1.未支給年金・未納給付金請求書
日本年金機構の公式サイトからダウンロードできます。
2.亡くなった方の年金証書
年金受給者が持っている年金証書です。
3.死亡の事実を確認できる書類
下記いずれか
- 住民票の除票
- 戸籍抄本
- 市区町村に提出した死亡診断書コピー
- 死亡届の記載証明書事項
4.亡くなった方と請求者の柄を確認できる書類
戸籍謄本や法定相続情報一覧図の写しなど
5.生計同一関係を証明する書類
- 健康保険被保険者証等の写し
- ⼊院・⼊所証明、⼊院・⼊所に係る領収書等の写しなど
6.受け取り先金融機関の通帳の写し
請求者名義の通帳の写し
※最新の情報を確認し、不備がないように準備しましょう。
未支給年金の請求権者
未支給年金の請求権は、相続の権利とは異なります。
原則として、故人と同居し、生計を一にしていた親族が、請求権者となります。
たとえば故人と別居していた子が申請者となるときは、相続人としてではなく、生計同一の親族として、申請をおこなうことになります。
条件を満たさない親族や期限を過ぎた場合には権利が失われるため、制度の詳細を正しく理解して申請を行いましょう。
請求権者の優先順位
申請者と同様の順位で請求できます。
- 配偶者(婚姻事実も含む)
- 子
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- それ以外の3親等以内の親族
請求権者の条件
1.生計を一にしていたこと
「生計を一にしている」とは、受給者と共に生活していた、または生活費の一部を擁護していた関係などが当てはまります。
同居していない場合でも、仕送りなどで生活費の一部を支えていた場合には請求可能です。
2.親族であること
未支給年金の請求権者は、法律で定められた親族のみが対象です。
具体的な例
配偶者がいる場合
故人 | 父親(年金受給者) |
---|---|
遺族 | 配偶者(母親)、子供2人 |
請求権者 | 配偶者(母親)が優先され、子供には請求権はありません。 |
配偶者がいない場合
故人 | 父親(年金受給者) |
---|---|
遺族 | 子供2人、孫1人 |
請求権者 | 子供2人のうち代表者が請求。孫には請求権はありません。 |
配偶者と子供がいない場合
故人 | 年金受給者 |
---|---|
遺族 | 兄弟姉妹2人 |
請求権者 | 兄弟姉妹のうち1人が代表して請求します。 |
注意点
・優先順位が高い者のみが請求可能
支給年金は、優先順位が高い親族が請求できるため、他の順位の親族は請求できません。
例えば、配偶者が生存している場合、子供や父母には権利請求がありません。
・同順位者が複数いる場合
同順位の親族が複数いる場合、代表者を1人選んで請求する必要があります。
例えば、子供が2人いる場合、1人が代表して申請します。
・親族がいない場合
法律で定められた親族がいない場合、未支給年金は請求する権利が発生しません。その場合、年金は国庫に戻ります。
因みにですが、相続人がいないために国庫に納められた金額は、2022年度では過去最多となる768億9444万円となっており、いかに遺言書が大切かわかります。
こちらも是非お読みください。
別居のときは生計同一の証明書が必要
生計を一にするとは、おもに、同じ住所に同居していたことを指しますが、別居の場合は、次のような事実関係が求められます。
- 生活費、療養費等の経済的な援助が行われていたこと
- 定期的に音信、訪問があったこと
必要な証明書類
送金記録
亡くなった受給者が請求者に仕送りをしていた場合
- 銀行の振込明細
- 送金記録(現金書留の控えなど)
支払記録
請求者が支払っていた場合
- 医療費、家賃、光熱費などの領収書
- 公共料金や通信費の支払い記録
住民票
住居地の証明に亡くなられた方と請求者の住民票(除票)
戸籍謄本
請求者と年金受給者の親族関係を証明
故人と同居の親族がいないとき、未支給年金の申請者に該当し、上記のような事実関係があった親族は、その内容を申立書に記載し、年金事務所へ申請をおこないます。
この申立書には、記載した事実内容に間違いがないとして、事情を知る第三者に、証明者として、署名をしてもらわなくてはなりません。
証明をする第三者とは
亡くなった方と請求者が生計を一にしていたことを証明するために協力してくれる第三者のことで、たとえば故人がひとり暮らしで、別居していた子が、生計同一の申請をおこなうときや、年金事務所が追加で証明を求めてきた場合、「生計同一関係に関する証明」が必要な場合があります。
証明する第三者の条件
証明を行う第三者にはいくつかのの条件が求められます。
1.客観的な立場
- 証明者は、請求者や利益者の親族ではないことが推奨されます。
- 客観的な証明が可能な関係者であることが重要です。
2.受給者や請求者の生活状況を知っていること
亡くなった年金受給者と請求者の生活状況を直接知っている人で、知人、友人、隣人、民生委員、区長、施設長、ケアマネジャー、事業主、家主、などが望ましいです。
申請者の配偶者や兄弟姉妹など、故人および請求者の三親等内の親族は、第三者として証明することができません。
第三者が行う証明方法
生計同一関係に関する証明書の記入
最後に設けられた第三者による証明欄に、第三者の方に記入してもらうのですが、第三者による証明欄に、法人(会社、病院、施設等)・個人商店から証明を受ける場合は、法人・個人商店の所在地・名称および証明者の役職・氏名・電話番号の記入が必要になります。
注意点
署名をする側も、何のことか分からないまま署名するのは嫌ですよね。証明を依頼する際には、第三者が証明内容をよく考え、負担にならないように説明することが大切です。
あきらめないこと
この署名がもらえない、または頼める人がいないという理由で、未支給年金の申請を断念される方が少なくありません。
きちんとした事実関係があるのであれば、あきらめず、証明いただける方を探して、申請をおこなっていただきたいとおもいます。
※まれに、この署名だけを弊社にしてもらいたいというお問い合わせがございますが、恐れ入りますが、弊社ではそのようなご対応はおこなっておりませんので、あしからずご了承くださいますよう、お願い申し上げます。
まとめ
未支給年金は、年金受給者が死亡した際に、死亡月までに支給されるべき年金を受け取ることができる大事な制度です。
未支給年金の手続きは、親族間の関係や生計同一性を証明する書類が重要です。特に別居していた場合は、第三者の証明が必要となることがあります。正確な書類の準備と迅速な対応で、スムーズな手続きを目指しましょう。
自分達で行うのが難しい場合は、専門の知識を持った方にお願いすると良いでしょう。