大切な人の未支給年金を受け取るために必要な手続きの流れやポイント、支給漏れ年金について解説します。

未支給年金の相続手続き

年金を受給されていた方が亡くなると、受け取るべき年金を受給しないままに亡くなってしまうケースが生じます。

この年金を、「未支給年金」といいます。

月の半ばで死亡した場合に、1~2か月分があとから遺族に支給されるケースが通常の未支給年金ですが、受給権者(未支給年金を受給できる権利を持つ人)の規定が細かく決められおります。

未支給年金を受け取れる人(受給権者)は、故人と生計を共にしていた遺族に限られます。具体的には以下の順序で受給権者が指定されます。

1. 同居していた遺族

  • 配偶者:まず最優先されるのは、故人と同居していた配偶者です。これは、法律上の配偶者に限られ、事実婚の配偶者も含まれる場合があります。
  • 子:配偶者がいない場合、故人と同居していた子が受給権を持ちます。未成年や生計を立てていた子供などが該当します。

2. 別居していたが生計を一にしていた遺族

  • 故人と別居していた場合でも、生活費の支援を受けていたなどの生計関係が証明できれば、受給権があります。たとえば、別居している子供や配偶者が該当します。

3. その他の親族
配偶者や子がいない場合、以下の親族が順に受給権者となります。ただし、生計を共にしていたことが必要です。

  • 父母
  • 祖父母
  • 兄弟姉妹

4. さらに親族がいない場合
上記のいずれにも該当しない場合は、故人と生計を共にしていた他の親族が受給権を持つ場合があります。

5. 生計を一にしていた者がいなかった場合
未支給年金を受け取る際に、生計を一にしていた者がいなかった場合、未支給年金の受給権は基本的に消滅します。未支給年金や支給漏れ年金は、故人と生計を共にしていた遺族に限られており、生計を共にしていなかった親族には受給する権利がありません。

注意点

未支給年金を受け取るには、「故人と生計を一にしていた」ことが重要な条件です。単に親族であるだけでは受給権は発生せず、生活費の援助を受けていたり、同居していたりすることを証明できる必要があります。

このため、受給権者は故人との関係や生計同一性を証明するための書類(住民票、送金記録、生活費の支援を受けていた証拠など)を準備し、年金事務所で手続きを行う必要があります。

手続きの流れ

未支給年金の請求には、以下の手順が必要です。

  1. 必要書類の準備
  2. 請求書の提出
  3. 審査
  4. 支給

手続きに必要な書類

未支給年金の手続きに必要な書類は以下の通りです。

1.未支給年金請求書 これは年金事務所や市区町村の役所で取得できる書類で、請求者が未払い年金を受け取るための書類です。
2.故人の年金証書 故人が受給していた年金の証明書で、年金手帳や年金番号が記載されているものです。
3.故人の戸籍謄本(死亡が記載されたもの) 故人が死亡したことを確認するための書類です。死亡届が役所にされると、戸籍に死亡届が記載されます。
4.請求者の戸籍謄本 故人との関係を証明するための書類です。これにより、請求者が権利者であることを確認できます。
5.請求者の住民票 請求者の現住所を確認するための書類です。
6.請求者の銀行口座情報(通帳やキャッシュカードのコピーなど) 請求者本人の口座であることが必要です。
7.故人の請求者生計同一関係を証明する書類(場合によって) 故人と同居していなかった場合や、親族関係が複雑な場合には、故人と請求者が生計を共にしていた事を証明する書類が必要です。

請求期限

未支給年金の請求には期限があり、故人が亡くなった日の翌日から5年以内です。
これは「消滅時効」に基づくもので、5年を過ぎると未支給年金を受け取る権利が消滅し、請求ができなくなります。

そのため、未支給年金があると判明した場合は、速やかに必要な書類を準備して請求手続きを行うことが大切です。故人の死亡後、早急に手続きを行うことが推奨されています。

請求期限

支給漏れ年金の相続手続き

未支給年金とは別に、年金記録問題の影響で、そもそも支給が漏れていたことが、死後になって発覚する場合もございます。

本来であれば毎月あと数万円ずつ支給されていたはずなのに、年金記録の手違いで支給がされていなかったケースです。
このような支給漏れ年金も、故人の遺族が請求することで受け取ることが可能です。
優先順位は、未支給年金と同様です。

支給漏れ年金の受給に際しても、「生計を一にしていた」ことが非常に重要な条件です。単に血縁関係があるだけでは受給権は認められず、生活費を援助してもらっていたり、同居して生活を共にしていたりすることを証明する必要があります。

遺族は、生計同一性を示すための書類(住民票、送金記録、生活費の支援を受けていた証拠など)を用意し、年金事務所で支給漏れ年金の請求手続きを行うことになります。

手続きの流れ

支給漏れ年金を請求するためには、未支給年金と同様に次のような手続きが必要です。

  1. 必要書類の準備
  2. 請求書の提出
  3. 審査
  4. 支給
1.必要書類の準備 未支給年金と同様に、支給漏れ年金の請求には戸籍謄本、死亡届、故人の年金証書、請求者の身分証明書などが必要です。また、支給漏れ年金に関する証明が必要になる場合もあるので、年金事務所に事前確認を行うことをお勧めします。
2.請求書の提出 支給漏れ年金請求書を年金事務所や、市区町村の役所に提出します。請求には、故人の年金番号や請求者の銀行口座情報が必要です。
3.審査と支給 提出後、年金事務所が確認し、支給が決定されると、指定口座に支給漏れ年金が振り込まれます。

注意点

支給漏れ年金の請求には、通常の未支給年金請求とは異なる手続きが発生する場合もあります。例えば、長期間支給が漏れている場合は追加の調査が必要なことがあり、審査期間が通常より長引くこともあります。そのため、年金事務所に詳細を確認し、必要な書類を揃えた上で、正確に手続きを行うことが重要です。

支給漏れ年金を受け取る際に、生計を一にしていた者がいなかった場合、未支給年金の受給権は基本的に消滅します。未支給年金や支給漏れ年金は、故人と生計を共にしていた遺族に限られており、生計を共にしていなかった親族には受給する権利がありません。

例外や特別な手続きはないのか?

残念ながら、現行の法律では、生計を一にしていた者がいない場合に支給漏れ年金を受け取る特別な手続きや例外はありません。その場合、未支給分の年金は国に返還されます。
したがって、受給権者がいない場合は、未支給年金や支給漏れ年金の請求ができないことになります。

年金は原則として相続財産ではない

場合によっては、20年、30年と遡って支給漏れの請求をおこなうこともありますが、そうなると、何百万円という金額になりますが、これは相続財産になるのでしょうか?

相続財産とは

相続財産とは、被相続人(亡くなった方)が死亡した時点で所有していた財産のうち、相続人に受け継がれるものを指します。
具体例としては以下のものがあります。

現金や預貯金 銀行口座の残高や現金など
不動産 土地、建物などの不動産資産
有価証券 株式、債券、投資信託など
動産 自動車、宝石、家具、美術品などの動産資産
生命保険の死亡保険金 契約内容によっては、相続財産として扱われる場合があります
債権 貸付金や未収の家賃など、相続人が受け取る権利を持つもの

遺産相続手続きについて

年金は、未支給年金であっても支給漏れ年金であっても、請求権をもつご遺族の個人の権利ですので、相続財産には該当せず、よって遺産分割の対象にもならず、相続税の対象にもならないのが原則です。

国税庁の説明によると、未支給年金は相続税ではなく、受給者の「一時所得」となるとされています。(参照 国税庁ホームページ

しかし、支給漏れのケースでは、きちんと支給されていれば故人の銀行口座に入金されていたはずで、相続財産となっていたはずです。

ところがこの場合でも、国税庁の見解では、あくまでも未支給年金として扱うため、相続財産ではなく、一時所得となるとしています。
次に一時所得について詳しく解説しておきます。

一時所得とは

一時所得とは、所得税法上の分類の一つで、定期的な収入ではなく、予期しない一回限りの収入や臨時的な収入を指します。
主に、宝くじの当選金や生命保険の一時金、懸賞金などがこれに該当します。
具体的には次のようなものが一時所得とみなされることが多いです。

一時所得の主な例

懸賞金や賞金 懸賞で得たお金やコンクールの賞金など。
生命保険の一時金 満期や解約時に受け取る一時金や、死亡保険金など。
宝くじの当選金 非課税となる場合もありますが、一時的な収入として扱われます。
その他の一時的な収入 不動産や金融商品の売却利益で、定期的な収入とみなされないものなど。

一時所得の計算方法
一時所得は、以下のように計算します。

一時所得=(総収入金額−収入を得るための費用)−50万円(特別控除額)

総収入金額:その一時所得にかかるすべての収入金額。
収入を得るための費用:その収入を得るためにかかった必要経費。
特別控除額:一時所得には年間50万円の控除額が設けられています。複数の一時所得がある場合も、50万円が上限です。

よって、未支給年金として受け取った金額が50万円を超える場合、確定申告が必要です。
言い換えれば、50万円以下の未支給年金の受け取りであれば、確定申告の必要はありません。
ほかの一時所得の収入と合算し、50万円を上回る所得があれば確定申告が必要になります。

年金の支給漏れには注意してください。