自宅などの不動産が親名義であるとき、相続が発生すると、当然に所有権は相続人に移ります。

不動産登記簿は実際の権利関係に合致しているのが基本ですので、相続が発生したら、ただちに名義を変更しなくてはいけないのが原則です。

しかし、相続登記をしなかったからといって、さしあたって何か不都合があるわけでもありません。

そのままお住まいを続けるだけならば、市役所の固定資産税の支払い名義人を変更すればOKです。申請だけでできます。

ところが、いざ不動産を売却するとか、相続人以外の人へ名義を移そうとすると、まず相続登記をしてからでないと、移転登記ができません。

登記上の名義人がお亡くなりになっていると、そのまま相続人以外に名義は移せないのです。

このときに、すんなりと相続登記ができれば問題はないのですが、年月が経過して当時の相続人も死亡していたりすると、さらにその相続人の協力が必要になります。協力が得られないと不動産が動かせません。

死亡していなくても、認知症などになっていると裁判所で後見人を申し立てなければならなくなります。

ひどい場合になると相続関係人だけで数十人、などという事態もありえます。

また、相続人の1人が借金を残して死亡したときも、相続放棄をすると、自宅まで放棄することになってしまうケースもあります。

父名義の不動産を残したまま、母が借金を抱えて亡くなったとすると、母の借金は相続放棄して父の不動産はすべて相続するということはできないのです。

このケースでは、母が生存中に、子へ不動産の名義をすべて登記しておけばよかったことになります。

将来何が起こるかわかりません。相続登記はできるときにやっておくことが賢明といえます。