遺留分とは

被相続人(亡くなった人)が、遺言などで、特定の人に自分の財産をすべて贈与する、などといったとき、本来の相続人は相続権がなくなってしまいます。相続人は遺産相続をあきらめるしかないのでしょうか?

民法では、たとえ故人の意思であっても、相続人が持つ相続権を完全に奪うことはできない、としています。相続権を守る権利を、遺留分権利といいます。

相続人は誰しも、被相続人の財産や遺産を相続する権利をもっていて、相続人が複数人いるときは、その分配比率が法律で決まっています。法定相続分といいます。この法定相続分の2分の1が、遺留分権利です。

Aさんの法定相続分が100万円なのに、故人が遺言で財産を他の人に贈与してしまったため、Aさんには30万円しか相続されなかったとすると、Aさんは法定相続分の100万円の2分の1、つまり50万円までは遺留分権利がありますので、足りない20万円を、その贈与を受けた人に請求できるのです。これを遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)といいます。

遺留分権利は相続人固有の権利なので、請求をするかしないかは相続人の自由です。

請求は贈与を受けた人に対して、口頭か文書でおこないます。いきなり裁判に訴える必要はありません。

なお、遺留分は権利があることを知った時から1年で、相続開始の時から10年で、時効になります。

遺留分減殺請求

被相続人(受贈者)から、遺言などで、多額の相続を受けた相続人(受遺者)が、ほかの相続人から遺留分減殺請求を受けてしまったらどうすればよいのでしょうか?

遺留分はすべての相続人が持つ、侵害することのできない権利ですから、減殺請求を受けた以上は、遺留分相当の代金を支払う義務が生じます。

具体的には、相続財産から遺留分相当額を支払うか、お手持ちの資産から、現金または不動産などで支払うことになります。

しかし、現金でしたら遺留分権利者も嫌がることはないでしょうが、資産価値があっても利用しようがないような動産や不動産でもらうとなると、遺留分請求者は抵抗するかもしれませんね。

ところが民法では、遺留分減殺請求を受けたものは、価額を弁償して返還の義務を免れる、とありますので、基本的に何をもって弁償するかの決定権は、支払うほうにあるのです。

遺留分権利者は、弁償を受ける内容についてまで、異議を申し立てる権利はないことになります。

遺留分の支払いは遺産分割とは別のこととみなされるのです。

とはいえ、たとえばさびれたリゾート地の土地のように、あまりにもらって困るものを渡されても、遺留分権利者の心情を害するだけで、遺恨を残すことにもなりかねません。

せっかく故人が残してくれた資産ですから、有効に、円満に、継承されるのがよいかも知れません。

ちなみに、相続または遺贈を受けた不動産で遺留分の代価を支払うと、贈与税ではなく譲渡所得の対象になります。無償で得た不動産を相手に渡して、利益を得たとみなされるからです。譲渡所得の一般的な税率は20%で、支払ったほうに課税されます。注意しましょう。