不動産名義が20年前に亡くなった父の名義で、相続登記が未登記のままに、母が亡くなってしまうケースがあります。

相続の法律で考えると、父が亡くなった時点で不動産は母と子の共有になり、母の死亡により母の持分が子に相続される、という順番になるので、本来なら亡くなった母と子の共有名義にいったん登記して、それから母から子への相続登記をおこなうことになります。

登記実務では、中間の相続が単独相続であれば、中間の登記を省略して、最終の相続人名義に登記できる、とされています。

祖父から父、その子へと順に相続されるとき(数次相続といいます)、名義は祖父のままで父も亡くなったとき、祖父から父への登記を省略して、祖父から直接、子(祖父から見れば孫ですが)へ相続登記できるということです。

今回の例では不動産名義人である父の相続人が母と子なので、登記実務の先例のように中間が単独相続ということにはなりませんが、分割協議を工夫して、相続の経緯を説明すれば、20年前に亡くなった父から直接子へ相続登記することは可能です。

相続登記にかかる登録免許税も、けっして安いものではありませんので、できるならしなくてよい登記はしたくないですね。お役所も柔軟に応じてもらえるのです。

数次相続がまねく遺産分割のトラブル

遺産相続にまつわる実務上のトラブルで、もっとも多いのが、先代や先々代のままに名義を放置し、何十年も経過してから相続手続きに着手する場合です。

名義人が亡くなられたときに、相続人であった方も、今は亡くなられているケースも多く、その場合は二次相続となり、本来相続人でなかったはずのいとこや配偶者が、正当な相続人として登場することになります。

こうなると、戸籍上の相続人が何十人とふくれあがることも珍しくなく、実際に当センターでお受けした案件に、相続人が48名いらっしゃったケースもございました。

全員の戸籍謄本と印鑑証明書を準備し、全相続人に事情を説明しながら、遺産分割協議の協力をお願いすることになります。

ひとりでも遺産分割協議書にご署名をいただけないと、名義変更ができません。

いつかいつかと放置するうちに、その不動産は誰も相続ができなくなってしまうこともよくありますので、相続手続きはなるべくすみやかに実行されることが望ましいとおもいます。