長男として家を継ぎ、お墓も継ぐのだから、法要などにお金がかかる、その分は多めに相続したい、という意見があります。

基本的には間違っていません。

しかし、過度の金銭を要求、とくに数百万円から一千万円くらいを、余分に相続権を主張されるケースが多いようです。

注意して欲しいのは、お墓を守ったり故人の法要を行なうという行為は、いわば宗教的なおこないであって、法的な義務ではないということです。

他の相続人が法要の費用を負担しないからといって、強制的に支出を求めることはできません。したがって、相続財産から事前に充当するということも、反対する相続人に対しては主張できないということになります。

お葬式費用は相続財産から支払われるのが通例ですから、これにならって、実際にかかった費用、もしくはかかると思われる費用を主張されるのが法的には正しいかもしれませんが、それでも反対する相続人に対して強要はできないとおもわれます。

仏教では、お骨を納骨せずに、仏壇などに安置することも認められています。故人の弔いに関してこうしなければならない、という絶対的なルールはありません。考え方を柔軟にして、故人に対する敬意を表するのが、残された遺族の相続争いを未然に防ぐ手立てともなり、故人の供養ともなるのではないでしょうか。